将来町内会のこれから 広げる・つなぐ・まとめる
町内会がこの先どうなるかについて、一つの決まった答えはありません。全国を見ると、小学校区ほどの広さで町内会や福祉の団体がまとまる動き、回覧板や会費の集金をスマートフォンに移す動き、マンションの管理組合との付き合い方を見直す動き、町内会どうしの合併や解散があります。法人になる道も広がりました。どれか一つが正解というより、町ごとに組み合わせを選んでいるのが実情です。それぞれの方向について、国や自治体の資料で確かめられることを並べます。
町内会より広い「地域運営組織」
地域運営組織とは、総務省の定義では、地域の人が中心になってつくり、地域のいろいろな団体が参加する話し合いの場が決めた方針にもとづいて、地域の課題の解決に取り組み続ける組織のことです。総務省の2025年度の調査では、活動の範囲が小学校区とおおむね重なるものが42.6%、統合などの前の旧小学校区と重なるものが17.5%でした。自治体の制度にもとづく「まちづくり協議会」のような組織が多く含まれます。 この調査(2026年3月の報告書)では、全国で8,587団体が確認されました。前の年度の8,193団体から394団体増え、2016年度の約2.8倍です。地域運営組織がある市区町村は903で、全体の51.9%でした。 町内会がなくなるわけではありません。同じ調査では、地域運営組織の78.8%が自治会・町内会を構成員にしています。町内会が単独では抱えきれない見守りや防災などを、もう一回り大きな単位で分け合う形です。ただし、地域運営組織の側も課題として「活動の担い手となる人材の不足」を82.2%、「役員・スタッフの高齢化」を66.1%が挙げています。収入源では「市区町村からの助成金・交付金等」が86.1%で最も多く、行政のお金に支えられている面があります。回覧板と会費のデジタル化
総務省の研究会が2021年8月時点で調べたところ、自治会などのデジタル化を支援した、または支援する予定の市区町村は1,741団体のうち263団体(15.1%)でした。市区町村が「デジタル化して効果がある」と考える分野は、災害時の安否確認が72.1%、電子回覧板が60.8%と多く、会費の集金の電子決済は16.6%にとどまります。一方、課題として最も多かったのは「住民の多くが操作等に不慣れである」の41.2%でした。 自治体の支援の例を挙げます。- 東京都:都内の町会・自治会がスマートフォンのアプリで電子回覧板を入れる費用や、町会費をQRコード決済で集める費用を、対象経費の全額助成する事業を行っています(2025年度に追加募集)。
- さいたま市:2022年度に電子回覧板のモデル事業を始め、2024年度から本格的に導入しました。アプリには回覧のほか、アンケートの回答集め、災害時の安否確認の機能もあります。2026年4月17日時点で45自治会が使っています。
マンションと町内会の関係
マンションには、建物を管理するために区分所有者(部屋の持ち主)全員でつくる管理組合があります。町内会は入るかどうかを選べる団体で、管理組合とは別のものです。国土交通省は2016年3月14日に、マンションの管理の指針と、管理組合の規約のひな型である「マンション標準管理規約」を改正しました。指針には、管理組合がコミュニティづくりに取り組むことを新たに書き込みました。規約のひな型では、コミュニティに関する条項を判例もふまえて整理し直し、防災・防犯や美化・清掃などのコミュニティ活動ができることをはっきりさせました。指針には、管理費とそれ以外の費用を分けることへの注意も加えています。 自治体の側にも、マンションを地域の仲間として扱う例があります。総務省の報告書によると、千葉市は地域活動をするマンション管理組合を町内自治会と同じような組織として位置づけ、条件を満たす管理組合の集会所を「地域避難施設」に認定して備蓄品を置いています。 マンションの自治会は役の決め方にも特徴があります。横浜市の調査では、マンションの区域の会長は輪番制が35.1%、立候補・推薦が36.8%でした。団地とマンションでは会長の任期1年が71%です。法人になって続ける道
町内会は、市区町村長の認可を受けると「認可地縁団体」という法人になれます。以前は、集会所などの不動産を持つことが認可の目的でした。2021年の地方自治法の改正で、不動産を持つかどうかにかかわらず「地域的な共同活動を円滑に行うため」に認可を受けられるようになりました(2021年11月26日施行)。総務省の説明では、法人になる目的として、活動の基盤を続けやすくすること、法人として契約を結べること、責任の所在をはっきりさせること、個人の財産と分けることなどが挙げられています。同じ年の別の改正で、認可地縁団体の総会に出ない人は、規約や総会の決議があれば、書面の代わりにインターネットなどを使う電磁的方法で票を入れられるようになりました(2021年9月1日施行)。合併や解散という選択
全国市議会議長会は2021年2月に「自治会・町内会等の縮小、解散問題に関する要望・提言」をまとめ、国に財政支援などを求めました。総務省の報告書は、担い手不足が深刻になり自治会の解散や合併に至った例があるとし、甲府市や福井市で解散の例があるという報告を注で紹介しています。 京都市の審議会資料は、存続が危うくなる町内会を二つの型に分けています。一つは、まちなかの小さな町内会や山間部で、つながりは濃いものの世帯が減り高齢の世帯が多く、負担が大きい型です。もう一つは、郊外の大きな住宅地や共同住宅で、転入者どうしで地域への関心が薄く、担い手が見つからずに解散に至る型です。同じ「解散」でも、原因が違えば打つ手も違います。 仙台市は、町内会の合併に向けた注意点を事例集にまとめています。市の2014年度の調査では、世帯数100以下の町内会が市全体の27%を占めていました。解散や合併を経験した町内会への聞き取りでは、担い手不足や役員の負担の重さが切実な問題として語られる一方、合併で担い手や活動の機会が増えたという声も聞かれたとしています。事例集は、合併には参加者や会費収入が増えるよい面がある一方、規模が大きくなって役員の負担が増すおそれもあると書いています。そのうえで、両方の町内会の同意が前提であること、会費や役員の任期、集会所の使い方などの決まりを急がず話し合うことを勧めています。見方が分かれるところ
地域運営組織や合併で単位を大きくすると、人手や会費をまとめて使えます。その反面、役員一人あたりの仕事が増えたり、近所どうしの顔の見える関係が薄れたりするおそれがあります。デジタル化は若い世代の参加や連絡の速さにつながる一方、使えない人を置いていかないための手間が増えます。法人化は財産や契約の面で安定しますが、規約や総会の手続きをきちんと守る必要が出てきます。考えるための問い
- 自分の町内会が10年後も続けたい活動はどれですか。それは町内会だけで担うべきものですか、もっと広い単位で分け合えるものですか。
- 回覧板や会費の集金をデジタルにしたら、だれが楽になり、だれが困りますか。
- 近くのマンションや隣の町内会とは、どんな付き合いがありますか。浜区の場合はどうか、考えてみてください。
出典
- 地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業 報告書【実態把握調査結果の概要】(総務省・2026年)
- 地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業 報告書(総務省・2026年)
- 地域コミュニティに関する研究会報告書(総務省・2022年)
- 地域コミュニティに関する研究会報告書の概要(総務省・2022年)
- 町会・自治会デジタル化推進助成の追加募集(東京都・2025年)
- 自治会支援アプリ(自治会電子回覧板アプリ)の導入について(さいたま市・2026年)
- 令和7年度 自治会町内会アンケート調査 報告書(横浜市市民局・2026年)
- 「マンションの管理の適正化に関する指針」及び「マンション標準管理規約」の改正について(国土交通省・2016年)
- 改正事項一覧(国土交通省・2016年)
- 認可地縁団体制度の改正に係る質疑応答について(総務省・2021年)
- 一番身近な単位の地域コミュニティ「自治会・町内会」支援の方向性と今後の審議会について(京都市・審議会資料7)
- 町内会合併に向けた留意点(仙台市・町内会活動・運営事例集)