2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 20)古くなった集会所を建て替えるとき
答え:まず建物を診断して建て替えか修繕かを決め、補助金、積立金、関係者との分担を組み合わせて費用をまかないます。持ち主が市なら、建て替えの費用は原則として市が負います。どの場合も、住民に情報を出して総会で決めることが欠かせません。
建て替えか、大きな修繕か
- 耐震性を確かめる:1981年(昭和56年)より前の古い耐震基準で建てた建物なら、耐震診断を受け、地震で倒れるおそれと、補強工事ができるかどうかを確かめます。
- 長い目で費用を比べる:屋根、外壁、水回りの大きな修繕で何十年かもたせられるか、修繕を重ねるより建て替えた方が長い目で見て維持費が安くなるかを比べます。
- これからの使い道に合うか:高齢化に合わせた段差のない造り(エレベーター、スロープ、車いす用トイレ)や、災害時の一時避難の場所(自家発電、備蓄)として使えるかどうかも判断の材料になります。
費用のまかない方
- 市町村の補助金:町内会が持つ集会所の建設や大きな修繕に、工事費の一部を補助する制度を設けている市町村が多くあります。耐震基準や避難所の指定など、補助の条件を前もって市の窓口で確かめます。
- 町内会の積立金:ふだんの会計とは別に、修繕や建て替えのために積み立ててきた特別会計を使います(質問6を参照)。
- 寄付を集めるときの注意:足りない分を住民や地元の事業者からの寄付で補う場合も、「1世帯○万円」のような割り当てや、入っていない人や反対する人からの強制的な徴収はしてはいけません。寄付は本人の自由な意思によるもので、割り当てを会費に上乗せする決議を無効とした裁判例もあります(質問14を参照)。
持ち主が町内会でない場合
- 持ち主が市の場合:古くなった建物の大きな修繕や建て替えの費用は、原則として持ち主である市が負います。町内会は管理や運営を受け持つ立場から、使われ方や古さによる危険を市に伝え、市の公共施設の計画の中で予算をつけてもらうよう求めて話し合います。
- 昔の会長や役員の個人名義、共有名義の場合:個人名義のまま建て替えや補助金の申請をしようとすると、相続のもめごとや手続きの行き詰まりが起きます。建て替えをきっかけに認可地縁団体(法人になった町内会)として名義を移し、名義人が亡くなって相続人がわからない場合は、地方自治法の登記の特例を使います(質問3を参照)。
住民の合意の取り方
- アンケートで考えを聞く:全世帯に、集会所をどのくらい使うか、どんな機能が要るか(段差のない造り、サロン、防災)、費用の負担をどう思うかを聞きます。
- 情報を出して説明会を開く:なぜ必要か、見積もり、補助金の額、積立金の残高、今後の予定を書いた資料を全戸に配り、説明会を何度か開いて、疑問や反対の声に答えます。
- 総会で決める:会則や規約で決めた条件(特別な多数決など)に沿って総会に議案を出し、正式に承認を得ます。
建て替えの間の代わりの場所
工事の数か月から1年ほどの間は、近くの公民館や市の施設の会議室、学校の空き教室や体育館、福祉施設、農協の集会室、神社や寺の集会所、近くのマンションの集会室などを借りることを考えます。うまくいった例と、もめた例
- うまくいった形:補助金を使って古い集会所を耐震化し、段差をなくして、ふだんは高齢者のサロンや子育ての交流に、災害時は避難の場所として使えるよう市と協定を結んだ例。土地と建物の個人名義の問題を法人化で解消し、積立と修繕の計画を総会で決めて進めた例。
- もめた形:建て替え費用が足りず、「1世帯○万円」と寄付を割り当てて集めようとして、反対する住民と激しく対立し、裁判や集団での退会に進んだ例。総会を開かずに一部の役員が契約や着工を進め、「無効だ」と訴えられて、役員の解任や会長が2人立つ争いにまで発展した例。
細かい実務について(太郎が補った考え方)
代わりの場所の借り方(使用料の免除の頼み方、保険)や、新しい集会所の建築確認、消防設備(誘導灯、消火器、非常用照明など)の基準は、本に直接の記述がなく、太郎が一般的な考え方から補ったものです。実際には市や専門家に確かめてください。浜区の場合(編集部注)
浜区の区民センターは泉南市の名義の建物です(質問4を参照)。浜区は2026年6月19日、泉南清掃事務組合の管理者である泉南市長に要望書を出しました。次のごみ処理施設の整備に伴う地元への補償と、区民センター(浜老人集会場)の建て替えを含む地域への還元策を検討するための基礎調査費を、2026年度の9月補正予算に計上するよう求めています。あわせて、調査の項目、範囲、予定について、浜区、泉南市、阪南市、清掃事務組合の四者で話し合う場をすぐに設けるよう求めています。根拠には、昭和43年に結んだ原協定書(全24条)を挙げています。 区民センター建て替え調査費要望書(浜区公式サイト)本によって評価が違うところ
- 施設を地域の拠点として整える立場:水津陽子さんは、集会所を地域の福祉と防災の大事な拠点と位置づけ、補助金、特別会計のルール、法人化を使って、透明さを保ちながら直し、続けていく方法をすすめています。
- 重い建物を抱えない立場:紙屋高雪さんは、町内会が重い不動産や借金を抱えることに疑問を投げかけます。市の施設なら行政が公費で直すべきで、負担が重すぎるなら無理に自前の建物を持たない「ミニマム町内会」という道もあると提案しています。
- 寄付の割り当てを批判する立場:佐藤文明さんは、寄付の割り当てやわかりにくいお金の使い方を強く批判し、情報の徹底した公開と、寄付は完全に任意であることを守るよう主張しています。
- 法人として手続きを守る立場:『自治会町内会等法人化の手引き』は、認可地縁団体になって個人名義のもめごとを防ぎ、総会の特別な多数決による厳格な手続きを踏むことを強調しています。
- 総会での合意を重く見る立場:中田実さんは、集会所は住民みんなの利益を支える場だと評価したうえで、役員だけで決めることを強く戒め、総会での民主的な合意を守るべきだと論じています。
出典
- 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
- 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
- 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
- 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)
- 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
- 玉野和志『町内会』