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管理ノート管理人の日記

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 20)古くなった集会所を建て替えるとき

答え:まず建物を診断して建て替えか修繕かを決め、補助金、積立金、関係者との分担を組み合わせて費用をまかないます。持ち主が市なら、建て替えの費用は原則として市が負います。どの場合も、住民に情報を出して総会で決めることが欠かせません。

建て替えか、大きな修繕か

  • 耐震性を確かめる:1981年(昭和56年)より前の古い耐震基準で建てた建物なら、耐震診断を受け、地震で倒れるおそれと、補強工事ができるかどうかを確かめます。
  • 長い目で費用を比べる:屋根、外壁、水回りの大きな修繕で何十年かもたせられるか、修繕を重ねるより建て替えた方が長い目で見て維持費が安くなるかを比べます。
  • これからの使い道に合うか:高齢化に合わせた段差のない造り(エレベーター、スロープ、車いす用トイレ)や、災害時の一時避難の場所(自家発電、備蓄)として使えるかどうかも判断の材料になります。

費用のまかない方

  • 市町村の補助金:町内会が持つ集会所の建設や大きな修繕に、工事費の一部を補助する制度を設けている市町村が多くあります。耐震基準や避難所の指定など、補助の条件を前もって市の窓口で確かめます。
  • 町内会の積立金:ふだんの会計とは別に、修繕や建て替えのために積み立ててきた特別会計を使います(質問6を参照)。
  • 寄付を集めるときの注意:足りない分を住民や地元の事業者からの寄付で補う場合も、「1世帯○万円」のような割り当てや、入っていない人や反対する人からの強制的な徴収はしてはいけません。寄付は本人の自由な意思によるもので、割り当てを会費に上乗せする決議を無効とした裁判例もあります(質問14を参照)。

持ち主が町内会でない場合

  • 持ち主が市の場合:古くなった建物の大きな修繕や建て替えの費用は、原則として持ち主である市が負います。町内会は管理や運営を受け持つ立場から、使われ方や古さによる危険を市に伝え、市の公共施設の計画の中で予算をつけてもらうよう求めて話し合います。
  • 昔の会長や役員の個人名義、共有名義の場合:個人名義のまま建て替えや補助金の申請をしようとすると、相続のもめごとや手続きの行き詰まりが起きます。建て替えをきっかけに認可地縁団体(法人になった町内会)として名義を移し、名義人が亡くなって相続人がわからない場合は、地方自治法の登記の特例を使います(質問3を参照)。

住民の合意の取り方

  1. アンケートで考えを聞く:全世帯に、集会所をどのくらい使うか、どんな機能が要るか(段差のない造り、サロン、防災)、費用の負担をどう思うかを聞きます。
  2. 情報を出して説明会を開く:なぜ必要か、見積もり、補助金の額、積立金の残高、今後の予定を書いた資料を全戸に配り、説明会を何度か開いて、疑問や反対の声に答えます。
  3. 総会で決める:会則や規約で決めた条件(特別な多数決など)に沿って総会に議案を出し、正式に承認を得ます。

建て替えの間の代わりの場所

工事の数か月から1年ほどの間は、近くの公民館や市の施設の会議室、学校の空き教室や体育館、福祉施設、農協の集会室、神社や寺の集会所、近くのマンションの集会室などを借りることを考えます。

うまくいった例と、もめた例

  • うまくいった形:補助金を使って古い集会所を耐震化し、段差をなくして、ふだんは高齢者のサロンや子育ての交流に、災害時は避難の場所として使えるよう市と協定を結んだ例。土地と建物の個人名義の問題を法人化で解消し、積立と修繕の計画を総会で決めて進めた例。
  • もめた形:建て替え費用が足りず、「1世帯○万円」と寄付を割り当てて集めようとして、反対する住民と激しく対立し、裁判や集団での退会に進んだ例。総会を開かずに一部の役員が契約や着工を進め、「無効だ」と訴えられて、役員の解任や会長が2人立つ争いにまで発展した例。

細かい実務について(太郎が補った考え方)

代わりの場所の借り方(使用料の免除の頼み方、保険)や、新しい集会所の建築確認、消防設備(誘導灯、消火器、非常用照明など)の基準は、本に直接の記述がなく、太郎が一般的な考え方から補ったものです。実際には市や専門家に確かめてください。

浜区の場合(編集部注)

浜区の区民センターは泉南市の名義の建物です(質問4を参照)。浜区は2026年6月19日、泉南清掃事務組合の管理者である泉南市長に要望書を出しました。次のごみ処理施設の整備に伴う地元への補償と、区民センター(浜老人集会場)の建て替えを含む地域への還元策を検討するための基礎調査費を、2026年度の9月補正予算に計上するよう求めています。あわせて、調査の項目、範囲、予定について、浜区、泉南市、阪南市、清掃事務組合の四者で話し合う場をすぐに設けるよう求めています。根拠には、昭和43年に結んだ原協定書(全24条)を挙げています。 区民センター建て替え調査費要望書(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • 施設を地域の拠点として整える立場:水津陽子さんは、集会所を地域の福祉と防災の大事な拠点と位置づけ、補助金、特別会計のルール、法人化を使って、透明さを保ちながら直し、続けていく方法をすすめています。
  • 重い建物を抱えない立場:紙屋高雪さんは、町内会が重い不動産や借金を抱えることに疑問を投げかけます。市の施設なら行政が公費で直すべきで、負担が重すぎるなら無理に自前の建物を持たない「ミニマム町内会」という道もあると提案しています。
  • 寄付の割り当てを批判する立場:佐藤文明さんは、寄付の割り当てやわかりにくいお金の使い方を強く批判し、情報の徹底した公開と、寄付は完全に任意であることを守るよう主張しています。
  • 法人として手続きを守る立場:『自治会町内会等法人化の手引き』は、認可地縁団体になって個人名義のもめごとを防ぎ、総会の特別な多数決による厳格な手続きを踏むことを強調しています。
  • 総会での合意を重く見る立場:中田実さんは、集会所は住民みんなの利益を支える場だと評価したうえで、役員だけで決めることを強く戒め、総会での民主的な合意を守るべきだと論じています。

出典

  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 玉野和志『町内会』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 19)広報紙とホームページで情報を届けるコツ

答え:紙は無理のない頻度で一目でわかる紙面にし、急ぎの知らせはデジタルで補います。ホームページやSNSは一人に任せず複数で更新し、写真や個人情報は本人の同意を取ってから載せます。

広報紙を読んでもらう工夫

  • 発行の頻度を無理のない範囲に:毎月の発行にこだわると、作成、印刷、配布で役員が疲れてしまいます。年に数回から月1回ほどにし、行事の中止や防犯情報のような急ぎの知らせはLINEやSNSで補うのが現実的です。
  • 一目で伝わる紙面に:文字を詰め込むと読まれません。大きな見出し、写真やイラスト、箇条書きを使い、要点がすぐわかるようにします。行事の案内と報告、防災の情報、地域で活躍する人の紹介など、親しみの持てる企画を入れます。
  • 書き手を広げる:広報の役員だけに任せず、文章やデザインが得意な住民、学生、PTA経験者などに「広報サポーター」として一回ずつ協力を頼みます。住民から写真や記事を寄せてもらう仕組みも効果があります。

ホームページやSNSを続けるときの注意

  • 更新を一人に任せない:詳しい人一人に頼ると、その人が辞めたとたんに更新が止まります。複数人の広報チームを作り、内容を確かめ合いながら更新します。担当が代わっても引き継げるよう、WordPressのような更新しやすい仕組みやひな形を使います。
  • 写真と個人情報の扱い:住民や子どもの顔写真を載せるときは、本人(子どもなら保護者)の同意を取るのが原則です。名前、住所、連絡先が写り込んでいないか、載せる前に複数人で確かめます。アカウントのIDとパスワードは個人用と分け、会のものとして管理し、引き継ぎます。札幌市の冊子も、個人情報を不用意に出さない、他人が写っていれば許可を取る、長く更新しないと住民が離れていく、という3点を注意として挙げています。
  • 費用:LINE公式アカウント、Facebook、Instagramなどは基本無料です。ただしLINE公式アカウントは月200通(送った回数×登録者数)を超えると有料(月5,000円から)になります。ホームページは、札幌市の冊子によると業者に頼むと最低でも20万円ほどかかります。町内会向けアプリは、ほしみ町内会の例で年30万円弱かかっています(質問10を参照)。市町村の助成金を使って初めの費用を抑える例もあります。

紙とデジタルの使い分け

  • 紙が向くもの:高齢の住民、スマホやパソコンを持たない世帯、じっくり読みたい人に向けた広報紙。総会資料や規約のように残しておくべき大事な書類。
  • デジタルが向くもの:20〜50代の働く世代、共働き、一人暮らし、若い家族に向けた、雨の日の行事の開催判断や防犯、防災の緊急情報のような急ぎの知らせ。過去の記事を探すことや、行事の申し込み。
  • つなぐ工夫:回覧板やチラシにQRコードを刷っておき、スマホで読み取ればホームページやLINE公式アカウントの登録画面に飛べるようにします。

うまくいった例

  • 連合町内会のホームページを各町内会と一緒に使う:札幌市の冊子では、中央区の幌西地区連合町内会の例が紹介されています。2023年3月に業者に頼んでホームページを作り、各町内会も一緒に使って、行事の案内や回覧板、地図を一か所に集めました。立ち上げには約130万円かかりましたが、札幌市の助成金100万円を受けて、会の負担は30万円ほどでした。WordPressを使い、前の記事を複製できるので、簡単な記事なら5分で更新できるそうです。
  • Instagramで活動を知らせる:同じ冊子で紹介されている厚別区のシティアベニュー町内会は、Instagramで活動や地域の企業との協力事業を発信しています。企業や団体が地域に関わっていることを町内会の内外に知ってもらうきっかけになり、地域への関心や連携が広がりました。
  • 会報とブログを併用する:本で紹介されている横浜市の白根相互自治会は、月1回の紙の会報に加え、ブログとメーリングリストを使っています。ブログは月1万5,000を超えるアクセスがあり、若い世代が自分の都合のよい時間に情報を得られるようになりました。

写真の載せ方の補足(太郎が補った考え方)

この段は本に直接の記述がなく、太郎が一般的な考え方から補った部分です。行事で参加者全員から一人ずつ同意を取るのが難しいときは、会場に「本日の様子は町内会のホームページや広報に載ることがあります。都合の悪い方はお申し出ください」という案内を出しておく方法があります。

浜区の場合(編集部注)

浜区は、広報紙「はま新聞」を発行し、浜区公式サイト(男里浜区のホームページ)にも載せています。公式サイトでは、行事の案内、規約・細則、防災訓練の案内なども公開しています。 男里浜区のホームページ(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • デジタル化を前向きに進める立場:水津陽子さんと札幌市の冊子は、情報発信のデジタル化、SNSやホームページの活用、紙との使い分けを前向きに進めます。若い世代や忙しい住民の関心を引き、役員の事務の負担を減らし、会の透明さを高める道具としてすすめています。
  • 配るもの自体を減らす立場:紙屋高雪さんは、広報紙作りや回覧板の配布そのものが役員の重い負担や押し付けになっていると指摘し、今は広報紙を作っても読まない人がたくさんいるとします。広報紙作りや情報発信に力を注ぐより、配るものや回覧を減らして役員の仕事を最小にすることを重く見ています。
  • 個人情報を守ることを重く見る立場:佐藤文明さんは、情報発信での個人情報の流出やプライバシーの侵害、行政の広報紙配りの下請けや動員に強く注意を促し、本人の同意と権利を守ることを最優先すべきだと主張しています。

出典

  • 札幌市『町内会のデジタル化』(町内会活動のヒント、2025年4月)
  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 18)隣組(班)の運営と組長の負担

答え:組は5〜15世帯ほどが回しやすく、組長は1年の輪番が多い形です。 組長の負担の中心は集金、回覧、会議なので、そこを減らすのが一番効きます。組長を引き受けられる世帯が減った組は、話し合って組を合わせ直します。

1つの組の世帯数

  • なぜ組に分けるのか:町内会は平均250世帯ほど、大きな団地では2,000世帯を超えることもあり、全世帯を直接つかむことはできません。そのため、班や組、団地やマンションでは棟や階ごとの小さなまとまりに分けています。
  • 太郎が補った考え方(本に直接の記述なし):回覧板を回しやすく、歩いて集金や連絡ができる範囲として、5〜15世帯ほどで1つの組にするのが一般的です。3〜4世帯と少なすぎると組長がすぐに回ってきて、20世帯を超えると集金や回覧の手間が大きくなりすぎます。

組長の決め方と任期

  • 決め方:多くの町内会では、順番に引き受ける輪番制です。選挙で決めることはまれで、実際には断りにくい雰囲気の中で順番に引き受けている、という面があります。
  • 任期:4月から翌年3月までの1年間とする地域がほとんどです。
  • 輪番制の行き詰まりへの工夫:高齢の世帯、一人暮らし、共働きが増え、完全な輪番制が回らなくなる例が増えています。そこで「75歳以上」「療養中」「小さな子の子育て中」などのときは組長を飛ばせる決まりを規約に書いたり、組長になったときにかかる時間の目安を示して断りやすくしたりしています。

組長の仕事を軽くする工夫

  • 集金をやめる、変える:一番効くのは、一軒ずつ回る手渡しの集金をやめることです。口座振替、銀行振込、年1回払い、カードやスマホでの支払い、マンションの管理組合を通したまとめての集金に切り替えると、留守の家に何度も行く負担がなくなります。
  • 連絡と回覧をデジタルにする:紙の回覧板に加えて、LINEのグループや公式アカウント、ユミコムのような町内会向けアプリで知らせれば、紙を回して集める手間が省けます。
  • 会議を減らす:毎月の組長会議や役員会を、LINEでのやりとりやZoomなどのオンライン会議に置き換え、集まる回数を減らします。
  • 作業や行事を任せる:掃除を業者に任せる、行事は組長を動員するのではなく有志のサポーターや実行委員会で運営する、といった形にします。

空き家や高齢の世帯が増えた組の扱い

  • 起きること:空き家や高齢の一人暮らしが増えて組長を引き受けられる世帯が減ると、特定の世帯に2〜3年おきに組長が回ってくるようになり、不公平感から退会やもめごとにつながります。
  • 組を合わせ直す:町内会全体で組ごとの世帯数の偏りを調べ、小さくなりすぎた組どうしを合わせて、組の大きさをそろえます。
  • 進め方:一部の役員だけで決めると反対が出ます。「なぜ組み直すのか(負担を減らし、続けていくため)」をていねいに説明し、会員の声を聞きながら合意を作ることが欠かせません。

うまくいった例

  • 自治会の統合と組の組み直し:本で紹介されている京都府綾部市の小畑地区の例です。高齢化や定年の延長で役員のなり手が足りなくなった3つの自治会が、30〜40代の若い人も入れた検討委員会を作り、1年半で16回の話し合い、住民への説明会、臨時総会を経て統合しました。同時に14あった組を8つに組み直し、役員の数は3分の1になって負担が大きく減りました。
  • 役員どうしの連絡をLINEにした:札幌市の冊子『町内会のデジタル化』では、手稲区の富丘山の手町内会の例が紹介されています。役員でLINEのグループを作り、簡単な質問や確認、決めごとはLINEで済ませ、行事のチラシや会議の議事録も共有しています。わざわざ集まる必要が減り、働く世代も町内会の運営に加わりやすくなりました。

浜区の場合(編集部注)

浜区の規約の細則では、隣組長は総会の代議員になり、組の会員から表決を任された立場で総会に出ます。理事の候補も、四つのブロックごとに担当の隣組長や管理組合の代表が推薦します。会費(月300円)の納め方も各隣組に任されています。11月14日の黄色いタオル安否確認訓練では、隣組長がタオルを配り、当日は確認班として組を見て回ります。浜区の運営は隣組長に支えられている部分が大きいといえます。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト) 浜区「黄色いタオル」安否確認訓練を実施します(11月14日)

本によって評価が違うところ

  • 組織とルールを新しくする立場:水津陽子さんは、組の大きさの偏りを正す組み直しや統合、LINEやキャッシュレスの導入、役員と組長の役割の見直し、謝礼つきのボランティアやサポーター制度など、組織とルールを積極的に新しくして負担を減らし、続けられる形にすることを示しています。札幌市の冊子も、LINEやアプリで集金、回覧、会議の手間を減らす実例を示しています。
  • 輪番の義務をなくす立場:紙屋高雪さんは、断れない雰囲気の中で義務として回ってくる組長の仕組みを、同調圧力として批判します。組や班に義務や手当を課して縛るのではなく、広報配りやごみ集積所の管理といった行政の下請けをやめ、会費も義務も手当もないゆるやかな「ミニマム町内会」に移るべきだと主張しています。
  • 顔の見える単位として整える立場:中田実さんは、組や班は「お隣さん」として顔の見える関係を育てる一番小さな単位であり、高齢化で弱っても放っておかず、住民の話し合いと総会での合意を経て整えていくべきだと説いています。

出典

  • 水津陽子『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 札幌市『町内会のデジタル化』(町内会活動のヒント、2025年4月)
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 玉野和志『町内会』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 16)会費の相場と決め方、払わない世帯への対応

答え:都市部では月100〜500円ほどが多く、集会所や祭りを抱える地方では月1,000円を超えることもあります。 会費は総会で予算と一緒に決め、払えない事情のある世帯には減額や免除の決まりを作り、払わない世帯を締め出さないことが大切です。

会費の相場

  • 都市部、大きな団地、マンション:月100〜500円ほど(年1,200〜6,000円ほど)が一般的です。本で紹介されている全国調査では「月500円未満」が44.5%を占め、広島県廿日市市の調査では平均が年4,958円(月約413円)でした。大都市では月100〜300円ほどが多く、月1,000円を超えるところはわずかです。
  • 地方都市、農村、昔からの地域:月1,000〜2,000円(年12,000〜24,000円以上)になることもあります。集会所の維持費、地域で持つ山林、伝統の行事や祭り、校区の協議会への分担金などが多い地域ほど高くなります。
  • 全体の傾向:小さく過疎が進む地域ほど高く、都市部の大きな団地やマンションほど安い、という傾向があります。

会費の決め方

  • 総会で決める:毎年の事業計画と予算(防犯灯の電気代、集会所の維持費、行事費、分担金、役員の手当など)をもとに、総会で話し合って決めるのが原則です。
  • 割り当て方:昔は世帯の収入や資産に応じて額を変える「見立割(みたてわり)」もありましたが、今はどの世帯も同じ額の「均等割」が一般的です。ただし、持ち家と賃貸、個人の世帯と店や事業所、一人暮らしと家族で、額に差をつけている地域もあります。

世帯の事情に応じた減額や免除

  • 減免の決まりが広がっている:高齢の世帯、一人暮らし、ひとり親、暮らしに困っている世帯などに配慮して、会費の免除や減額、役員の免除を会則に書く町内会が増えています。
  • なぜ今、決まりにするのか:昔は近所どうしで事情をくみ取って個別に配慮していましたが、プライバシーへの意識が高まって暮らしの事情がわかりにくくなり、一時は全員同じ額を集めるのが主流になりました。ところが会費や役員の負担を理由に退会する人が増えたため、安心して関わってもらえるよう、はっきりした減免の決まりを前もって規約に書いておく動きが見直されています。

会費を払わない世帯への対応

  • 退会した世帯や未加入の世帯に会費を強いることはできない:最高裁判所は2005年の判決で、町内会は加入も退会も自由な任意団体だと示しました(質問1を参照)。退会した世帯や入っていない世帯に、会費の支払いを強いることはできません。
  • 起こりがちな摩擦:「お金も出さず掃除も手伝わないのに、防犯灯やごみ集積所の恩恵だけ受けている」と見られ、ごみ出しを断る、回覧を回さない、無言の圧力をかけるといった締め出しが起きることがあります。
  • 望ましい解決のしかた:ごみ集積所は、会に入らなくても掃除当番や実費だけ分担してもらう。祭りなどの行事は、会員は無料か割引、会員でない世帯は実費の参加費をもらうことで不公平感をなくす。会費の使い道がわからないという不信が不払いの背景にあることも多いので、領収書や帳簿の明細を全戸に公開して納得してもらう。

会費をなくした町内会の例と、その後

  • 会費なしで出直した団地の自治会:紙屋高雪さんの本では、年4,000円の会費を集めていた団地の自治会の例が紹介されています。役員のなり手がいなくなって前の自治会が休会したあと、有志が「集金と役員の義務こそが問題のもと」と考え、会費も義務も手当もない、完全なボランティアの新しい会を作りました。決まった会費はなくし、収入は行事の参加費、寄付、バザーの売り上げだけにしました。前の自治会に残ったお金(約20万円)は使わずに保管し、残高を定期的に住民に知らせています。その結果、手渡しの集金も、未払いをめぐる不仲もなくなり、やりたい人がやりたい活動(夏祭りなど)だけを楽しむ会として続いています。
  • そのほかの見直し:役員の手当をなくす、行政の無償の下請けや評判の悪い大きな行事をやめて有志の運営に変える、といったことで経費を大きく減らし、会費を下げたり、参加した人だけが払う形に切り替えたりした例もあります。

電子決済の手数料(参考)

札幌市の冊子『町内会のデジタル化』では、会費をカードで集めた町内会の手数料は2.5%(対面)、アプリでのオンライン払いは3.6%(税別)と紹介されています(質問11を参照)。手数料を会費からどう負担するか、減免の申請を誰がどう受け付けるか、といった運用の細かい部分は、太郎が一般的な考え方から補ったもので、本に直接の記述はありません。

浜区の場合(編集部注)

浜区の規約は、第6条で会員は総会で別に定める会費を納めるとし、細則で会費(区費)を1世帯月300円(年3,600円)と定めています。納め方は各隣組などに任せ、途中で退会しても納めた会費は返さない決まりです。この記事の相場でいえば、都市部の一般的な水準(月100〜500円)の中ほどにあたります。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • 会費をなくす立場:紙屋高雪さんは、最高裁判決のとおり町内会は完全に任意であることを徹底すべきだとし、払わない世帯への強制や集金の圧力を強く批判します。集金や役員手当そのものが人を疲れさせているとして、会費を集めない「ミニマム町内会」への移行を提案しています。
  • 仕組みを新しくする立場:水津陽子さんは、減額や免除の決まりをはっきりさせ、電子決済や銀行振込で集金の手間を減らし、行事は参加した人が払う形にするなど、決まりと仕組みを現実に合わせて新しくすることをすすめています。払わない世帯は締め出さず、情報を公開し配慮して歩み寄るべきだと論じています。
  • 助け合いの組織として柔軟にする立場:中田実さんは、町内会を地域の助け合いの組織として重視します。見立割から均等割への移り変わりをふまえ、今の暮らし向きや高齢化に合わせて減免を取り入れるなど柔軟に会費を決めること、総会で民主的に予算を決めることの大切さを強調しています。

出典

  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 玉野和志『町内会』
  • 札幌市『町内会のデジタル化』(町内会活動のヒント、2025年4月)

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 15)町内会の記録をどう残し、次の世代に伝えるか

答え:会計の証拠書類は7年、議事録や規約など会の大事な決定の記録はずっと残すのが目安です。 記録は役員個人の手元に置かず、会のものとして一か所にまとめておくと、役員が代わっても散らばりません。

どのくらい保存するか

  • 会計帳簿と領収書、請求書:7年:水津陽子さんは、会社の会計にならって、領収書や請求書、会計帳簿などの証拠書類は7年保存するのが目安だとしています。
  • 財産目録と会員名簿:法律で事務所に置く義務がある:認可地縁団体(法人になった町内会)は、財産目録と会員名簿を事務所に備えておくことが地方自治法で決められています(質問2を参照)。『自治会町内会等法人化の手引き』はこうした書類の扱いを解説しています。
  • 総会や役員会の議事録、規約:ずっと残す:会の意思決定や権利にかかわる大事な書類は、長く、できればずっと保存します。
  • 太郎が補った考え方(本に直接の記述なし):回覧の連絡や一時的な案内は2〜3年で整理してかまいません。一方、年度ごとの決算書、総会の議事録、記念誌、地域の歴史を伝える写真や広報紙のバックナンバーは、役員が代わったときの参考や地域の歴史の記録として、半永久的に残すのが一般的です。

紙とデジタルの使い分け

  • 紙の原本で残すもの:監査や税金、法律の手続きで実物を確かめる必要がある領収書、請求書、契約書、通帳、署名や押印のある総会議事録などは、紙の原本を日付順にとじ、鍵のかかる場所にしまいます(水津陽子さん)。
  • データで残すもの:過去の広報紙、総会の配布資料、行事の案内、行事の写真や動画などは、スキャナーやスマホでデータにし、会のパソコンや共有のクラウド、町内会向けアプリに整理して保存します。
  • 両方を使い分ける:インターネットを使わない高齢の住民には紙の回覧や印刷物で届け、役員どうしの共有や予備の保存はデータで行う、という使い分けが、いまの町内会にはいちばん現実的だとされています(水津陽子さん)。

役員が代わっても記録を散らばらせない工夫

  • フォルダを分け、パスワードをかける:札幌市の冊子『町内会のデジタル化』は、どのフォルダに何を保存しているかがわかるように分けること、個人情報のデータにはパスワードをかけて役員の中だけで共有することをすすめています。
  • 太郎が補った考え方(本に直接の記述なし):役員個人のパソコンやUSBメモリに置くと、代わるたびに「どこにあるかわからない」となりがちです。会のパソコンや会の名前で作ったクラウド、アプリにまとめ、「2025年度」のような年度別と、「回覧、会計、写真、議事録」のような種類別のフォルダの決まりを作り、役員が代わるときは会のアカウントのIDとパスワードをそのまま次の人に引き継ぎます。引き継ぎの確認表や保存場所の一覧を作り、前の役員と新しい役員が1か月ほど一緒に動く期間を設けると、なくしたり散らばったりするのを防げます。

記録を地域の歴史として公開した例

  • 広報紙をデータにし、伝統行事を映像に残した:水津陽子さんの『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』では、福井県大野市の和泉自治会の例が紹介されています。自治会の中に人と伝統を受け持つチームを作り、過去の自治会の広報紙をデータにしたり、伝統行事をDVDに残したりして記録を整え、ホームページやFacebookで地域の内外に伝えています。
  • 連合町内会のホームページに記録を集めた:札幌市の冊子『町内会のデジタル化』では、中央区の幌西地区連合町内会の例が紹介されています。連合町内会の50周年記念の取り組みをきっかけに、2023年3月にホームページを作り、各町内会と一緒に運営して、行事の案内などを一か所に集めて公開しています。
  • 地域のSNSやブログに積み上げる:水津陽子さんは、写真や行事の報告を地域のSNSやブログに公開して積み上げておくと、新しく越してきた住民や若い世代が地域の歴史や活動を見られるようになる例も紹介しています。

浜区の場合(編集部注)

このサイト(浜区文書アーカイブ)は、浜区に残るはま新聞、総会資料、議事録、会則、会計などの記録をデータにして集め、浜区クロニクルとあわせて会員向けに公開しているものです。この記事の「記録を地域の歴史として公開した例」の一つにあたります。浜区の規約では、事務所に規約、会員名簿、認可や登記の書類、総会と役員会の議事録、収支の帳簿、財産目録などを備えておくと定めています(第40条)。細則では、事務長が議事録を作り、正確を期すために録音機器を使い、その録音データは3年間保存すると定めています。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • データ化と公開を進める立場:水津陽子さんと札幌市の冊子は、記録の整理、データ化、公開を積極的に進めます。資料をデータにしてクラウドで管理し、ホームページやSNSで公開することは、役員の事務を減らし、引き継ぎを楽にし、会計の透明さと信頼を高めるために欠かせないと位置づけています。
  • 法律どおりの保管を重く見る立場:『自治会町内会等法人化の手引き』は、認可地縁団体として、財産目録や会員名簿などの書類を事務所に正しく備えておく手続きを解説しています。
  • 事務を増やしすぎない立場:紙屋高雪さんは、大がかりな書類の整理やデジタル化は、無報酬の役員を疲れさせると指摘します。会計もレシートを板に貼ってみんなで確かめる程度でよく、複雑な記録の保存がいらない「ミニマム町内会」を主張しています。
  • 個人情報を守ることを重く見る立場:佐藤文明さんは、記録の保存やデータ化、公開では、プライバシーの侵害や名簿の不当な使い回し、監視につながらないよう、個人情報の管理と本人の意思の確認を何より大事にすべきだと主張しています。

出典

  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』
  • 札幌市『町内会のデジタル化』(町内会活動のヒント、2025年4月)
  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 14)市から頼まれる仕事は断れるか

答え:断ることができます。 町内会は任意の団体で、行政の下部組織ではありません。行政から頼まれる仕事は、法律で強いられるものではなく「協力のお願い」や任意の委託なので、町内会が自分たちで判断して、断ったり、条件の見直しを求めたりできます。

それぞれの仕事の位置づけ

  • 広報紙の配布:本来は、市がすべての住民に対して自分の責任と費用で届ける情報提供の仕事です。郵送やポスティングの費用を浮かせるために、町内会の班を無償か少しの謝礼で使ってきた協力関係にすぎず、町内会に配る義務はありません。
  • 赤い羽根や歳末たすけあいの募金集め:民間の共同募金会や日本赤十字社などによる、任意の寄付のお願いです。寄付は本人の自由な意思によるもので、各戸に金額を割り当てたり、強制的に集めたりすることは認められません。滋賀県甲賀市の自治会が募金や寄付の分を会費に上乗せして集めると決めた件では、大阪高等裁判所が2007年にその決議を無効とし、判決は確定しています。
  • 民生委員や各種委員の推薦:民生委員は、民生委員法に基づいて厚生労働大臣が委嘱する非常勤の公務員です。候補者を選んで推薦するのは、市町村の民生委員推薦会の仕事です。行政や関係団体が人手不足から町内会に推薦を「お願い」しているだけで、町内会が必ず候補者を出す法的な義務はありません。
  • ごみ集積所の管理と掃除:廃棄物処理法で、家庭ごみを集めて処理する責任は市町村にあると定められています。集積所の掃除や管理を町内会に任せきりにしているのが実態で、本来行政が担う仕事を住民の無償の労働に頼っている構造です。

断るとき、減らすときの進め方

  1. 仕事を洗い出す:市のどの課から、どんな依頼(広報配り、募金、回覧、会合への出席など)が来ているかを一覧にし、アンケートで役員や住民の負担感を見えるようにします。
  2. 総会で決める:会長一人で決めず、総会や役員会で「行政の依頼の見直し、一部の辞退」を決め、町内会の正式な意思としてまとめます。
  3. 文書で申し入れる:任意団体としての限界や、高齢化、役員不足といった理由を書いた文書で、市の担当課に仕事を減らす話し合いを正式に申し入れます。(文書の出し方や窓口との交渉の細かい手順は、太郎が一般的な考え方から補った部分です)
  4. 少しずつ減らす:一度にすべてやめるのが難しければ、「回覧を月2回から1回に」「戸別の募金集めはやめ、行事の会場に募金箱を置くだけに」「人数を割り当てる動員は受けない」といった、実現できる見直しを提案します。

行政と話し合って仕事を整理した例

  • 広報配りを業者に任せた:水津陽子さんの本では、神奈川県開成町の例が紹介されています。町内会の役員の一番の負担だった広報紙の配布を、民間のポスティング業者に任せる形に切り替えました。配るチラシに地元企業の広告を入れて配布費用をまかない、役員の広報配りをなくしました。
  • 市全体で依頼のルールを作った:同じく水津陽子さんの本で紹介されている川崎市の例です。行政からの依頼を市全体で整理し、ルールを作りました。各課からばらばらに来ていた回覧や掲示の依頼は窓口にまとめて月1回にし、審議会などの委員の依頼は年2回にまとめ、人数を割り当てる動員の依頼は原則としてやめました。
  • 区長への手当をやめた:岩手県北上市は、区長個人に手当を払って行政の事務を担わせる制度をやめ、地域の団体にお金を払う仕組みに変えました(質問7を参照)。

本によって評価が違うところ

  • すぐに返すべきだという立場:紙屋高雪さんは、町内会は完全に任意の団体であり、広報配り、ごみ集積所の管理、募金、民生委員の推薦などの下請けの仕事は本来行政がやるべきだとして、すぐに断り、返すべきだと主張します。仕事をできるだけ減らした「ミニマム町内会」への転換を提案しています。佐藤文明さんは、戦時中の動員の仕組みに根をもつ下請けの構造や、募金の割り当て、ごみ管理の押し付けを厳しく批判し、一人ひとりの権利と自由な意思を守るため、行政からの無償の労働の求めは断り、厳しく見張るべきだと主張しています。
  • 話し合って切り分ける立場:水津陽子さんは、行政の依頼が役員を疲れさせている現実を認めたうえで、行政と町内会を対等な協働の相手と位置づけます。川崎市や開成町の例を引きながら、話し合って仕事を切り分け、ITやルールで続けられる協力関係に作り直すことを提案しています。
  • 住民自治の意味を認める立場:中田実さんは、ごみ集積所の管理や地域の美化には住民自治としての意味があると認める一方、共同募金の割り当てや強制は否定しています。行政からの依頼には、総会での話し合いを通じて組織として対応すべきだと強調しています。
  • 歴史から分析する立場:玉野和志さんは、町内会が行政の末端の仕事を長く引き受けてきた歴史を分析し、行政が町内会の好意や無償の労働に甘え、本来の責任を棚上げしてきた構造を指摘しています。

出典

  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 岩崎信彦、上田惟一、広原盛明、鯵坂学、高木正朗、吉原直樹 編『増補版 町内会の研究』(御茶の水書房、2013年)
  • 玉野和志『町内会』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 13)安否確認の訓練と、避難の手助けに使う名簿

答え:訓練は「家にいたまま、短い時間で」参加できる形にし、結果を住民に返すと続きます。名簿は目的をはっきりさせ、本人の同意を得て作り、載りたくない人に無理強いしないことが基本です。

安否確認の訓練を続けるコツ

  • 家にいたまま、すぐ終わる形にする:大勢が一か所に集まる訓練は準備が重く、参加する人も減りがちです。本で紹介されている千葉市のマンションの自治会では、決めた時間に家の中で1分間身を守る動作をしたあと、玄関の外に「無事です」のカードを貼り、班長や役員が見て回る訓練をしています。寝間着のままでも参加できる手軽さから、参加率は70〜90%と高くなっています。
  • 前もって知らせ、結果を返す:訓練の案内を全戸に配って意味を説明し、終わったら「参加率は○%でした」「○世帯の無事が確かめられました」と回覧板や広報紙で知らせます。自分の行動が地域の安全確認につながったという手応えが、次の参加につながります。
  • ふだんのあいさつの延長にする:特別な訓練だけでなく、隣の人とあいさつを交わす、近所の顔と名前がわかる、といったふだんのつながりが、いざというときの助け合いにそのまま役立ちます。

名簿の作り方

  • 何を書いてもらうか:住所と氏名だけでなく、災害のときにすぐ連絡や手助けができる情報を入れます。本で紹介されている名古屋市の自治会では、家族構成、生年月日、親族などの緊急連絡先、かかりつけの医師、障がいや要介護度などを書いてもらう調査票を使い、2年に1回作り直しています。
  • 作る手順:目的をはっきり書いた調査票を配る。手渡しや鍵付きのポストで集め、同意を確かめる。紙は鍵のかかる場所に、データはパスワード付きのパソコンにしまう。年1回か2年に1回見直す。(手順の細かい部分は、太郎が一般的な考え方から補ったものです)

個人情報保護法との関係

2017年5月に改正された個人情報保護法が施行され、扱う人数にかかわらず、町内会も法律の対象になりました。守るべきことは次の5つです。
  1. 目的を示し、目的の外で使わない:「災害時の安否確認と避難の手助けのため」のように使い道をはっきり伝えます。
  2. 漏れないように管理する:紙は鍵のかかる引き出しに、パソコンならパスワードをかけます。
  3. 本人の同意なく人に渡さない:原則として、本人の同意なしに外へ名簿を渡しません。
  4. 訂正や削除の求めに応じる:本人から「直してほしい」「消してほしい」と言われたら、すぐに応じます。
  5. 問い合わせ先を書いておく:会長や防災担当の役員など、問い合わせ先を案内に書きます。

名簿に載りたくない人への対応

  • 安心できる説明をする:「名簿は鍵をかけてしまう」「見られるのは災害のときに手助けをする役員や班長だけ」といった管理の仕方をていねいに説明し、不安をやわらげます。
  • 無理強いはしない:町内会は任意の団体なので、名簿に載ることを強いることはできません。断られたら、無理に聞き出さず、載せないでおきます。
  • ゆるやかに見守る:名簿に載らないからといって遠ざけるのではなく、ふだんのあいさつや顔なじみの関係で気にかけ、いざというときに近所の人が様子を見に行ける関係を保ちます。

市の避難行動要支援者名簿との関係

  • 作るのは市の義務:災害対策基本法で、自分で避難するのが難しい高齢者や障がいのある人などの「避難行動要支援者名簿」を作ることは、市町村の義務とされています。
  • 市から町内会への提供:市は、本人の同意を得たうえで、町内会、自主防災組織、民生委員など、避難を手助けする人たちに名簿を渡します。
  • 市の名簿を地域で補う:町内会は市から受け取った名簿をもとに、「最近足が弱ってきた」「昼間は一人になる」といった、市には届きにくい日々の変化を、地域の名簿やふだんの付き合いで補い、避難の手助けや安否確認に生かすことが期待されています。

浜区の場合(編集部注)

浜区の自主防災会は、2026年11月14日(土)午前9時から、区内の全850世帯を対象に「黄色いタオルによる安否確認訓練」を行います。合図とともに玄関や窓、ベランダなど外から見える場所に黄色いタオルを掲げ、隣組長を中心とした確認班が見て回って記録します。家にいたまま一つの動作で参加できる形で、この記事の「訓練を続けるコツ」にそのまま当てはまります。くわしくは浜区公式サイトの案内をご覧ください。 浜区「黄色いタオル」安否確認訓練を実施します(11月14日)

法律の例外について(編集部注)

個人情報保護法には、人の命や体を守るために必要で、本人の同意を得るのが難しい場合は、同意なしに情報を渡せるという例外があります。災害対策基本法でも、災害が起きたときは、市は本人の同意がなくても避難を手助けする人たちに要支援者名簿を渡せることになっています。「どんなときも同意なしには渡せない」わけではありません。この段は本の内容ではなく、編集部が補ったものです。

本によって評価が違うところ

  • 行政の責任をはっきりさせる立場:紙屋高雪さんは、要支援者名簿を作る義務はあくまで市町村にあることを強調します。行政が負うべき福祉や避難支援の重い責任を、無報酬の町内会に丸投げしたり義務にしたりすることに強く反対し、町内会はあいさつやふだんの連絡ができる関係で十分だと主張しています。
  • 地域の助け合いを重く見る立場:水津陽子さんは、行政の助けだけでは大きな災害のときに限界があるとして、町内会を中心にした助け合いの大切さを説きます。個人情報保護法に沿った名簿の管理や、LINEのオープンチャット、アプリなどの道具を使い、役員の負担を抑えながら地域で防災の体制を作る方法をすすめています。
  • 配慮したうえで前向きにとらえる立場:中田実さんは、個人情報保護法ができてからプライバシーへの意識が高まり、情報が集めにくくなったことを指摘します。そのうえで、命を守る緊急時には近所のよい関係と情報の共有が欠かせないとし、プライバシーに十分配慮した名簿作りや訓練を前向きにとらえています。

出典

  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 水津陽子『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 12)老人会や子ども会が弱ってきたときの関わり方

答え:倒れる前に場所や広報で支え、続けるのが無理になったら、町内会の部会にまとめるか、解散や休会を前向きに受け止めます。 そのとき、団体がしてきた行事をすべて町内会が引き受けないことが大切です。

町内会の支え方

  • 場所とお金を支える:集会所を優先して使えるようにする、使用料を免除する、町内会の会計から補助を出す、といった形で活動の場所とお金の負担を軽くします。
  • 広報と会員募集を手伝う:町内会の回覧板、掲示板、ホームページ、LINEなどで、団体の行事の案内や会員の募集を手伝います。
  • 行事を一緒に開く:夏祭り、敬老会、ラジオ体操などの準備を子ども会や老人会に任せきりにせず、町内会が中心になって実行委員会を作り、地域の有志や保護者に一回ずつ手伝ってもらう形で一緒に開きます。

まとめるか、やめるか

  • 町内会の部会にまとめる:子ども会や婦人会が独自に持っていた会長、会計、監査、総会をやめ、町内会の中の「子ども部」「高齢者福祉部」などにまとめ直します。役員選びや会費集め、総会の事務が一本になり、役員の負担が大きく減ります。
  • 解散や休会は話し合って進める:まずその団体の総会で解散や休会の方針を決め、それから町内会の役員会や総会と話し合います。
  • 責めない:最後の役員に「あなたの代でつぶすのか」と言うのではなく、時代が変わったことによるものと受け止め、解散や休会を前向きに認め合うことが大切です。

残ったお金と行事の引き継ぎ

  • 町内会に寄付してもらう:団体の規約の解散の決まりに沿って、残ったお金を町内会に寄付してもらい、「子ども育成基金」や「高齢者福祉特別会計」のように目的を決めて使います。
  • 使わずに取っておく:いつか有志が活動を再開するかもしれないので、残ったお金には手をつけず町内会の特別会計などで保管し、毎年の総会で残高を報告する方法もあります。
  • 太郎が補った考え方(本に直接の記述なし):団体が解散するときは、団体名義や代表者の名義の口座を解約して、残ったお金を町内会の口座に移します。最後の収支の決算書を作って監事の監査を受け、総会に報告してから引き継ぐ、という手順を踏むのが大切だ、としています。
  • 行事をすべて引き継がない:団体がしてきた事業をそのまま町内会の役員が引き受けると、町内会がもたなくなります。アンケートで住民の希望を確かめ、防災訓練や伝統の祭りなど、本当に必要な行事だけを選びます。
  • 引き継いだ行事は有志で運営する:役員の当番にせず、やりたい人ができる範囲で手伝う形で続けます。

うまくいった例

  • 子ども会を実行委員会の形に変えた:保護者のなり手がいなくて子ども会が解散しかけたとき、子ども会という組織はやめ、子ども神輿やクリスマス会を開くときだけ、町内会が中心になって保護者や地域の有志をその都度募る形にしました。保護者は1年間の重い役員から解放され、一回だけの手伝いとして多くの人が参加するようになりました。
  • 老人クラブと町内会のサロンをつないだ:水津陽子さんの本では、会員が減って悩む老人クラブとは別に、町内会が誰でも気軽に集まれるサロンを開いた例が紹介されています。老人クラブの会員にも手伝ってもらいながら、クラブに入っていない高齢者も加わる新しい交流の場へ、少しずつ移っていきました。
  • 休会したあと、会費なしで出直した:紙屋高雪さんの本では、役員がいなくて自治会が休会したとき、残ったお金(約20万円)を使わずに保管し、会費も義務も手当もない有志だけの新しい会を作って、夏祭りや餅つきなど「やりたい人がいる行事」だけを続けた例が紹介されています。

本によって評価が違うところ

  • 町内会がまとめ役になる立場:水津陽子さんは、町内会を地域活動の土台ととらえ、弱った団体を部会や実行委員会、サポーターとしてまとめ直すことをすすめています。広報の手伝いや補助、デジタル化を使い、町内会が先に立って続けられる形に作り直すべきだという考えです。
  • 解散を前向きに受け止める立場:紙屋高雪さんは、縦割りの団体は行政の動員や役員の二重の負担を生んできたと批判し、解散や休会を前向きにとらえます。町内会の役員が無理に仕事を引き取って負担を増やすべきではなく、活動は有志に任せ、解散したときのお金は使わずに保管する身軽な運営を勧めています。佐藤文明さんは、町内会と婦人会や子ども会などが絡み合い、行政の動員や募金の二重の集金の道具になってきた構造を厳しく批判し、見直しや解散では、一部の役員の都合ではなく、一人ひとりの意思とすべてを公開することを何より大事にすべきだと主張しています。
  • 団体の自主性を守る立場:中田実さんは、団体を町内会が直接運営しすぎると団体の自主性が失われるおそれがあるとしたうえで、総会や話し合いを通じて、対等な関係を保ちながら連携を進めるべきだと論じています。

出典

  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 札幌市『町内会のデジタル化』(町内会活動のヒント、2025年4月)
  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 11)マンションの住民や新しく越してきた世帯との付き合い方

答え:加入を当然とせず、防災や子育てなど相手にも得のある活動から、無理なく関わりを作るのがよいとされています。 会費をマンションの管理費と一緒に集める方法は手間が省けますが、本人の意思を確かめないと大きなもめごとになります。

マンションの入り方

  • 管理組合ごとにまとめて入る:マンションの管理組合の総会で決め、全世帯がまとめて町内会に入る方法です。水津陽子さんは、建物を管理する管理組合と、防災や防犯、親睦を担う町内会が役割を分け合い、補い合う良い例として挙げています。
  • ただし注意が要る:佐藤文明さんと紙屋高雪さんが指摘するとおり、管理組合(区分所有者が必ず入る組織)と町内会(住民が任意で入る団体)は性質がまったく違います。町内会への加入と退会は本人の自由なので、管理費から全戸分の町内会費を出すと、住民から「強制だ」と反発され、もめごとになるおそれがあります。
  • 世帯ごとに入る:住民が世帯ごとに自分の意思で入る方法です。本人の意思によるので摩擦は起きにくい一方、加入する世帯が少なくなりやすく、訪問や回覧も難しくなります。

会費の集め方

  • 管理費や家賃と一緒に引き落とす:分譲マンションの管理組合や賃貸の管理会社と話し合い、管理費や家賃と一緒に町内会費を引き落としてもらう方法です。集金の手間は省けますが、住民が「知らないうちに入れられ、会費を引かれていた」と不満を持つ原因にもなります。
  • 個別に集める、電子決済を使う:役員が一軒ずつ回って現金を集める負担を減らすため、銀行振込、スマホ決済、町内会向けアプリでの支払いを取り入れる町内会が増えています。札幌市の冊子『町内会のデジタル化』では、約160世帯の北区グリーンタウン東茨戸町内会が、Square(スクエア)というアプリを使い、役員のスマホにカードをかざして会費を払う方式を全世帯に取り入れた例が紹介されています(手数料は2.5%)。手稲区ほしみ町内会は、ユミコムというアプリで、クレジットカード、PayPay、コンビニ、銀行振込から払い方を選べるようにしています。現金を持ち歩く危険や手渡しの手間を大きく減らせます。

行事や役員への関わり方

  • 押し付けない:古くからの住民が「町内会に入って当然」「昔からの決まりに従うべきだ」という態度を見せると、新しい住民は警戒して距離を置きます。最初から行事への参加や集金を求めるのではなく、マンションの入り口に防災訓練や行事の案内を貼る、子育てや防災のようにマンションの住民にも得が実感できる活動から関わりを作る、といったやり方が効果的です。
  • マンションを一つの班にする:マンション全体を一つの班とみなし、マンションの中で選んだ連絡係や管理組合の理事が町内会との窓口になる形が一般的です。
  • いきなり重い役を頼まない:新しい住民にいきなり会長や会計を頼むと退会の原因になります。サポーター制度や複数の副会長で負担を軽くする、役員を免除する決まりを作る、といった準備をしておくことがすすめられています(質問10を参照)。
  • 太郎が補った考え方(本に直接の記述なし):マンションと戸建てで役員をどう分担するか、ごみ出しのマナーをめぐる町内会と管理組合の取り決めなど、日々の運用の細かい部分は、本の原則をもとに一般的なやり方から補った、としています。

うまくいった例

  • 管理組合と町内会が補い合う:町内会ができて1年後のマンションで、管理組合の総会で管理費から全戸分の町内会費を出すことが決まった例があります。建物の保守は管理組合、防災、防犯、交流は町内会と分け、共用部分の掃除や植栽の手入れを町内会のボランティアで行って業者に払うお金を節約し、住民どうしの関係づくりとマンションの価値の維持を両立させました。
  • 区の条例で話し合いを後押しする:東京都豊島区は条例で、新しいマンションを建てる人などに、地元の町会と話し合うことを求めています。行政が間に入ることで、新旧の住民の摩擦を防いでいます。
  • 防災をきっかけに関係を作る:マンションの入り口で防災訓練や行事を案内し、管理組合の理事を招いて交流を始め、災害時の協力から無理なく信頼関係を築いた例があります。

もめた例

  • 町内会費の自動引き落とし:家賃や管理費と一緒に町内会費が引き落とされていたのに、活動の中身は知らされておらず、住民が「望んでいないのに勝手に入れられていた」と怒ってもめた例があります。
  • 管理費からの一括支出をめぐる裁判:管理費から全戸分の町内会費を出したことに対し、一部の住民が「加入も退会も自由なのに、強制的に払わせるのは違法だ」と裁判を起こした例があります。
  • 神社の費用が混ざっていた:町内会費に地元の神社の維持費や祭りの費用が含まれていて、新しい住民から信教の自由や使い道のわかりにくさを理由に支払いを断られ、不払いや退会につながった例があります。
  • 古くからの住民による押し付け:古くからの住民が仕切る町内会で、決まりや会計の説明もないまま「次はあなたの番だから役員を」と押し付けたり、意見を無視したりして、新しい住民が嫌気がさしてまとめて退会した例があります。

マンションの管理規約の扱い(編集部注)

国土交通省のマンション標準管理規約は、2016年の改正で、町内会費は管理費とは分けて扱うものと整理しました。管理組合の仕事は建物の管理で、町内会の活動とは区別する、という考え方です。この段は本の内容ではなく、編集部が補ったものです。

浜区の場合(編集部注)

浜区の規約の細則では、総会を代議員制で行い、各管理組合の代表が、管理組合の会員から表決を任された代議員になります。理事の候補も、担当の隣組長や管理組合の代表が推薦します。マンションは管理組合を窓口にして区の運営に加わる形です。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • 補い合う相手とみる立場:水津陽子さんは、管理組合と町内会は、建物と地域のつながりで補い合える対等な相手だと考えます。管理費からの町内会費の一括支出や防災での協力を前向きに評価し、ITや決まりの見える化で、新旧の住民が共に暮らせる環境づくりを提案しています。『町内会のデジタル化』も、回覧板のLINE化、Squareなどの電子決済、ユミコムのような町内会専用アプリによって、マンションの住民や若い世代が負担なく関われるようにする方法を示しています。
  • 任意を徹底する立場:紙屋高雪さんは、町内会は完全に任意の団体であり、強制加入や自動引き落としに強く反対します。管理組合と町内会を混同することを批判し、まとめての強制加入や行事の押し付けをやめて、会費も義務もない関わり方にとどめるべきだと論じています。佐藤文明さんは、全戸加入の圧力や神社の費用の一括徴収を個人の権利の侵害として厳しく批判し、管理組合による町内会費の一括支出も住民の意思を無視した強制になりうると警告しています。

出典

  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 札幌市『町内会のデジタル化』(町内会活動のヒント、2025年4月)
  • 岩崎信彦、上田惟一、広原盛明、鯵坂学、高木正朗、吉原直樹 編『増補版 町内会の研究』(御茶の水書房、2013年)
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 10)役員のなり手不足と会長の負担を軽くする工夫

答え:仕事を分ける、仕事そのものを減らす、任期と交代の決まりを規約に書く、の3つを組み合わせている町内会が多いです。 役員のなり手がいないことと、会長一人に仕事と気苦労が集まることは、全国の町内会に共通する悩みです。

仕事の分け方

  • 副会長を複数置く:会長の仕事や窓口を何人かの副会長で分け合います。副会長が実務を経験するので、次の会長を育てることにもなります。
  • 手伝う人を募る:何もかも決まった役員だけでやろうとせず、行事の運営、広報配り、防災訓練など、特定の活動だけを手伝う「サポーター」や実行委員を募ります。住民が一回だけでも関われる仕組みです。
  • 手間をデジタルで減らす:役員の負担で一番大きいのは、集金、回覧板の手渡し、紙の書類作りです。LINEのグループ、町内会向けアプリ、キャッシュレス決済に切り替え、出歩く手間や手作業を大きく減らします。札幌市の冊子『町内会のデジタル化』では、約330世帯の手稲区ほしみ町内会が町内会専用アプリ「ユミコム(Yumicom)」を入れた例が紹介されています。説明会を6回開き、その場で一緒に登録するなどして、約1年で8割以上の世帯に広げました。電子回覧板、会員管理、会費のオンライン払い、行事の出欠、災害時の安否確認を1つのアプリでまかない、費用は年30万円弱です。
  • いらない事業をやめる:分け方を考える前に、前例どおり続けてきた大きすぎる行事(大運動会や夏祭りなど)や行政の下請けの仕事を思い切って減らし、全員の負担そのものを軽くします。

任期の決め方

  • 任期と再任の上限を規約に書く:任期は1〜2年(都市部では1年が多い)とし、「続けて○期まで」という上限も規約に書いておきます。一度引き受けたら辞められない、という不安をなくすためです。
  • 選び方と交代の決まりをはっきりさせる:任期や選び方の決まりがない町内会も多いですが、役員が同じ顔ぶれのまま年を取り、なれ合いになるのを防ぐため、総会で決まりを作っておくことが大事だとされています。

手当や報酬の考え方

  • かかった費用を補う:手当は無報酬から年に数千円から数万円、都市部では年10万円を超える例まであります。多くは給料というより、電話代や車のガソリン代などを補う「費用の弁償」や「謝礼」として払われています。
  • 会費を免除する:役員や班長をしている間、その世帯の会費を免除する地域もあります。
  • 手当を出さず、仕事を最小にする:数万円の手当では時給にすると割に合わず、かえって「お金をもらっているのだから」と周りから多くを求められる原因になります。そこで、手当を出すのではなく、仕事そのものを最小にして手当なしの完全なボランティアにする、という改革案もあります。

引き継ぎの仕方

  • 前の役員に相談役として残ってもらう:前の役員や経験者を「顧問」として残し、新しい役員の最初の1年に付き添って相談に乗ってもらいます。
  • 書類をデータにしてまとめる:紙のファイルの山を引き継ぐのをやめ、WordやExcelでデータにして、クラウドやアプリでまとめて管理します。ファイルやアカウントを渡すだけで引き継げるようになります。
  • 太郎が補った考え方(本に直接の記述なし):年間の予定に沿った「月ごとの仕事の確認表」と「連絡先の一覧」を前もって作っておき、役員が代わる時期に、前の役員と新しい役員が1か月ほど一緒に動く期間を設けると効果が大きい、としています。

浜区の場合(編集部注)

浜区の規約では、区長1人、副区長2人、事務長1人、副事務長2人、会計1人、理事8人、監事3人を置きます(第9条)。任期は原則3年以内で、再任もできます(第12条)。細則では、役員の候補者は公示の期間中に区長に届け出ることとし、理事は四つのブロックごとに、担当の隣組長や管理組合の代表が毎年1人以上の候補を推薦します。候補者が定員を超えれば総会で選挙をし、超えなければまとめて信任します。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • 仕組みと道具を新しくする立場:水津陽子さんは、複数の副会長、サポーター、顧問、任期の上限、ITや電子決済、費用の弁償や会費の免除など、組織の仕組みと道具を新しくして役員の負担を減らし、働く世代や若い人が参加しやすくすることをすすめています。札幌市の『町内会のデジタル化』も、LINE、ユミコムのような町内会専用アプリ、Square(スクエア)などの電子決済で集金、回覧、引き継ぎの手間を大きく減らした実例を示しています。
  • 仕事そのものをなくす立場:紙屋高雪さんは、手当や副会長を増やすといった工夫だけでは、仕事が多すぎるという根本は解決しないと指摘します。行政の下請けの仕事や大きすぎる行事をすべてやめ、会費も義務も手当もない「ミニマム町内会」にする根本的な見直しを主張しています。
  • 決まりと話し合いを重く見る立場:中田実さんは、役員が長く固定してなれ合いになるのを防ぐため、民主的な選び方と交代の決まりを規約に書き、総会で決めることを重視しています。

出典

  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 札幌市『町内会のデジタル化』(町内会活動のヒント、2025年4月)
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 玉野和志『町内会』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 9)会則どおりに開かれなかった総会の決定は有効か

答え:大事な手続きを守らずに開いた総会の決定は、無効とされたり、効力を争われたりするおそれがあります。 不備を指摘されたら、正しい手続きで総会を開き直して決め直すのが確実です。

決めたことは有効か

  • 定足数が足りなかった場合:会則で決めた定足数(たとえば会員の過半数の出席)に、委任状や書面での表決を合わせても届かなかった総会では、正しく議決できたことになりません。
  • 案内や資料の配布が期限に遅れた場合:会則に「総会の○日前までに資料を配る」とあるのに遅れると、会員が前もって議案を考え、反対の意見を準備する機会を奪ったことになり、決定の効力を争われる原因になります。
  • 認可地縁団体(法人になった町内会)の場合:地方自治法で、総会の少なくとも5日前までに、話し合う事項を示して招集の通知を出すことが決められています(第260条の15)。これを守らなかった決定は、法律上の効力を争われるおそれがあります。

あとから問題にされたときの対応(太郎が補った考え方)

この段は本に直接の記述がなく、太郎が一般的な団体運営の考え方から補った部分です。
  1. 事実を確かめて説明する:資料の配布が遅れた、定足数を数え違えたなど、不備があったことを認め、会員に経緯を説明します。
  2. 総会を開き直して決め直す:すでに決めたこと(役員の選任、予算など)を確かなものにするには、期限どおりの通知と資料の配布、定足数の確保という正しい手続きを踏んだうえで、「前の総会で決めたことを改めて承認する」ことを議題にした臨時総会を開きます。全世帯に書面で賛否を聞く方法もあります。
  3. その間は実行を止める:反対が強くもめている場合は、決め直すまで、その事業やお金の支出をいったん見合わせ、対立が広がるのを防ぎます。

手続きを守るための工夫

  • 委任状か書面表決書を必ず付ける:会場に来る人だけで定足数を満たすのは難しいので、総会の案内に委任状か書面表決書(議案ごとに賛否を書く用紙)を付け、前もって集めます。
  • デジタルの道具を使う:LINEの公式アカウントや、ユミコム(Yumicom)のような町内会向けアプリで資料を前もって配り、オンラインで賛否を集めれば、紙の配布の遅れを防ぎ、忙しい世帯からも回答を得やすくなります。
  • 日程を逆算して手順書にする:会則の期限(たとえば1週間前の配布)から逆算して、「1か月前に資料の原稿を仕上げる」「3週間前に印刷して封入する」といった手順を一覧にし、役員の引き継ぎ書に書いておきます。
  • 会則を今に合わせて直す:会場への出席しか前提にしていない定足数や、厳しすぎる期限の決まりがあれば、書面やオンラインでの表決を正式に認める内容に、総会で改めておきます。

浜区の場合(編集部注)

浜区の規約では、総会の案内は、目的と内容、日時、場所を示して、開く日の10日前までに文書で出します(第17条)。総会は、委任状を含めて会員の3分の2以上が出席しないと開けません(第19条)。出られない会員は、書面で賛否を出すか、ほかの会員に表決を任せることができます(第21条、第22条)。細則では、総会を代議員制で行い、隣組長と各管理組合の代表が、それぞれの隣組や管理組合の会員から表決を任された代議員になると定めています。会員は誰でも参加して発言し、表決することもできます。議事録には、議長と議事録署名人2人以上が署名します(第23条)。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • 手続きを厳しく守る立場:水津陽子さんは、通知の期限に遅れた総会や定足数に届かない総会の決定は無効だと厳しくとらえます。そのうえで、役員の負担を増やさずに手続きを守るため、書面表決や委任状を使うことをすすめています。『自治会町内会等法人化の手引き』は、認可地縁団体として、招集の期限(5日前まで)、定足数、議決のルールを法律に沿って厳しく解説し、書面やオンラインも使った正しい決め方を求めています。
  • 柔軟な運営を重く見る立場:紙屋高雪さんは、町内会は自分たちで運営する任意の団体であり、手続きを裁判のように厳しくしすぎると住民どうしが疲れてしまうと考えます。手続きの議論にこだわるより、住民の多数の意見や納得を大事にした柔軟な運営と、総会の負担そのものを減らす「ミニマム町内会」を提案しています。
  • 手続きが組織を守るとする立場:中田実さんは、正しい手続きを無視して強引に進めると、裁判にまで発展するような深刻なもめごとになると、実際の例を挙げて指摘します。会則に沿った手続きと話し合いでの合意が、組織を守る前提になると強調しています。

出典

  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』
  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 札幌市『町内会のデジタル化』(町内会活動のヒント、2025年4月)

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 8)会計監査を形だけにしないには

答え:役員から独立した監事を総会で選び、通帳と領収書を一つずつ照らし合わせ、その結果を全会員に公開することです。 監査が判を押すだけになるのは、通帳や領収書の原本を見ない慣行と、監事が役員から独立していないことが原因です。

監事の選び方

  • 役員から独立した人を総会で選ぶ:会長、副会長、会計などの役員と監事を兼ねさせません。役員どうしのなれ合いや、役員と監事を交代で回してお互いにチェックし合う関係を防ぐためです。
  • 向いている人を選ぶ:経理や会計の経験がある人や、地域の中で中立の立場からものを言える人を選びます。
  • 太郎が補った考え方(本に直接の記述なし):年の順や「断れなかった人」で決めるのではなく、立候補や推薦、会計に詳しい住民に協力を頼むやり方を規約に決めておくとよい、としています。

監査のやり方

  • 通帳と出納帳を照らし合わせる:通帳の記録と年度末の残高(必要なら銀行の残高証明書)が、出納帳の数字と合っているかを確かめます。
  • 領収書を一枚ずつ確かめる:すべての支出に領収書、請求書、納品書があるかを見ます。但し書きが「お品代」、宛名が「上様」のようなあいまいなものは認めず、品名や目的が書かれているかを確かめます。
  • 備品を実物で確かめる:買った備品が台帳のとおりにあるかを見ます。
  • 使い道が正しいかを確かめる:予算の範囲内か、規約や総会の決定に沿っているか、役員の個人的な飲食や私物に使われていないかを見ます。
  • 監査報告書を作る:問題がなかったこと、または直すべき点を書いた監査報告書を作り、監事全員が署名して総会に出します。

問題が見つかったとき

  • 小さな誤り(計算違い、書き漏れなど):総会の前に会計や会長に伝え、計算し直しや書類の直しをしてもらいます。
  • 重大な不正や、直すのを拒まれたとき:監事は決算書への署名を断り、不正の事実を書いた監査意見を総会で直接報告します。認可地縁団体(法人になった町内会)の監事は、不正を見つけて報告するために必要なら、自分で総会を招集できます。会長が総会を開こうとしなくても、全会員に事実を知らせることができます。
  • 太郎が補った考え方(本に直接の記述なし):横領のように刑事事件になりそうな場合は、役員を辞めさせる、お金を返させる、弁護士や警察に相談する、といった対応も考えます。

役員と会員が対立したときの収め方

  • 使い道をすべて見えるようにする:対立の多くは「何に使われているかわからない」「役員が自分たちのために使っているのではないか」という不信から始まります。決算書の科目を細かく分け、領収書の明細や買った物の写真を、広報紙、掲示板、ホームページなどで全世帯に公開します。
  • お金の使い方の上限を決めておく:役員のお茶菓子代、慰労会、手当などについて「1人○円まで」「年○回まで」といった決まりを、前もって総会で決めておきます。
  • 住民に聞いて、いらない事業をやめる:批判の多い前例どおりの行事(大運動会や豪華な景品など)は、アンケートで住民の評価を聞き、縮小したりやめたりします。
  • 総会で決める:感情的な対立になったら、密室で話し合うのはやめ、規約に従って総会(または臨時総会)を開き、議案として話し合って多数決で決めます。

浜区の場合(編集部注)

浜区の規約では、監事を3人置き(第9条)、区長、副区長などの役員とは兼ねられません(第10条)。監事は会計と資産、役員の仕事ぶりを監査して総会に報告し、不正を見つけて報告するために必要なら総会の招集を求めることができます(第11条)。監事から求めがあれば、区長は60日以内に臨時総会を開かなければなりません(第16条、第17条)。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • 会計のルールをはっきりさせる立場:水津陽子さんは、領収書の管理、通帳との照らし合わせ、手当やお茶菓子代の上限など、会計のルールをはっきりさせ、事業を毎年見直す仕組みを入れることを提案しています。電子決済やアプリで集金や会計の手間を減らすこともすすめています。
  • 扱うお金を小さくする立場:紙屋高雪さんは、町内会のお金の私物化や横領は全国で後を絶たないと指摘します。監査をいくら厳しくしても役員の負担が増えるだけなので、集めるお金と予算そのものを小さくし、いらない事業や行事をやめることが一番の不正防止と対立の予防になると主張します。自分が会長をした自治会で、全戸に配る広報紙に領収書や帳簿の情報をすべて載せ、住民の不信をぬぐった例も紹介しています。
  • 全会員への公開を求める立場:佐藤文明さんは、地域の有力者によるお金の私物化や、特定の神社への寄付、政治的な支出など、わかりにくい会計を厳しく批判し、全会員への徹底した公開と、総会を民主的に運営することを強く求めています。
  • 総会での手続きを重く見る立場:中田実さんは、会計を正しく行い、総会で承認を得るという手続きを重視します。対立が起きても感情的にこじらせず、規約と総会を通じた話し合いで解決すべきだと論じています。
  • 法律の枠組みで管理する立場:『自治会町内会等法人化の手引き』は、財産目録の作成、監事の独立と総会を招集する権限、総会の決議など、法律の枠組みに沿った財産管理を解説しています。

出典

  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)
  • 札幌市『町内会のデジタル化』(町内会活動のヒント、2025年4月)

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 7)市からのお金を会長が直接受け取るのは問題か

答え:大きな問題があります。 市からのお金は会の会計に収入として入れ、総会で報告するのが正しい扱いです。

なぜ問題か

  • チェックが働かない:会の会計を通らないお金には、監事の監査も総会での報告も届きません。わかりにくい会計、使い込み、横領といった不正やもめごとの直接の原因になります。
  • 住民の不信を招く:予算にも決算にも載らないので、住民から「行政のお金が裏でどう使われているのかわからない」と思われます。それが会費の不払いや退会につながります。
  • お金を出した趣旨に反する:事務委託費や補助金は、広報配り、防災、美化など、地域全体や会の活動に対して出されるものです。個人が受け取ったり、個人の口座に置いたままにしたりするのは、市の交付の決まりや契約の趣旨に反します。

正しい扱い方

  • 会の会計に収入として入れる:事務委託費、補助金、助成金はすべて、一般会計か特別会計に「委託金収入」「補助金収入」などの科目で入れます。監事の監査を受け、毎年の総会で報告して承認を得ます。
  • 役員に払うときも支出として記録する:会長や役員が広報配りや会議などの仕事をして、手当や交通費、通信費を受け取る場合も、規約や総会で決めた手当の規定に基づいて、会の会計から支出します。領収書や受け取りの印を残し、明細を公開します。

会長個人の収入とみなされたときの税金(太郎が補った考え方)

この段は本に直接の記述がなく、太郎が一般的な税金の考え方から補った部分です。実際の扱いは税務署か税理士に確かめてください。
  • 市からのお金を会長が個人で受け取り、実際に自分の収入にしていると、税金の上では会長個人の所得(雑所得など)になります。会社員や年金生活の人でも、ほかの所得が年20万円を超えると確定申告が必要です。
  • 「町内会の仕事でもらったお金だから」「昔からの慣例だから」と申告していなかった場合、税務調査で個人の所得とされると、さかのぼって所得税や住民税を納め、加算税や延滞税を払うことになるおそれがあります。
  • 会から役員に手当を払うときも、金額や内容によっては会が源泉徴収をしなければならない場合があります。

こうした慣行をやめた例

  • 区長個人への報酬をやめ、団体に払う形に変えた:水津陽子さんの本では、岩手県北上市の例が紹介されています。北上市では自治会の役員を市の「行政区長」に任命し、広報配りなどの報酬を区長個人に払っていました。2020年4月に法律が変わり、こうした非常勤の公務員の任命が厳しくなったことを受けて、北上市は2021年3月で区長の任命をやめました。代わりに、地域の組織や自治会という団体にお金を払う仕組みに切り替えています。仕事とお金が一人の区長に集まることがなくなり、団体の会計として管理されるようになりました。
  • 広報配りを業者に任せた:広報紙の配布を役員に頼むのをやめ、ポスティング業者に任せて、委託料を受け取る仕組みそのものをなくした市町村もあります。

本によって評価が違うところ

  • 行政の丸投げを批判する立場:紙屋高雪さんは、行政が区長や町内会長をただ同然の下請けとして使い、中途半端な委託料や手当でごまかしてきた構造そのものを批判します。個人での受け取りや不正の原因は行政の丸投げにあるとし、広報配りなどは業者か行政自身が行い、町内会は会費も義務も手当もない「ミニマム町内会」にすべきだと主張します。佐藤文明さんは、行政のお金が会長個人や一部の有力者の懐に入ったり、利権になったりする体質を厳しく批判し、帳簿の全戸公開と総会での厳しいチェックを求めています。
  • 団体の会計に正しく入れる立場:水津陽子さんは、北上市の例などをふまえ、行政と対等な関係を作り直すことを提案します。個人での受け取りをやめて会の会計に入れ、収支の明細を見えるようにし、会計の手順を手引きにまとめ、ITや業者への委託で負担を減らす、という実務的な解決を重視しています。
  • 総会での管理を重く見る立場:中田実さんは、行政の仕事を受けたり補助金を受け取ったりすることは地域活動の資金になりうるとしたうえで、役員だけで決めたり、わかりにくい会計にしたりすることは許されないとし、総会で予算と決算をきちんと審議して承認すべきだと述べています。
  • 法人の会計として管理する立場:『自治会町内会等法人化の手引き』は、認可地縁団体として、個人のお金と会のお金をはっきり分け、財産目録や収支の書類をそろえて管理するよう求めています。

出典

  • 水津陽子『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 6)協力金や還元金は会計でどう扱うか

答え:ふだんの会計とは分けて管理し、使い道は総会で決め、中身をすべて公開するのが基本です。 13冊の中に、迷惑施設の協力金や補償金そのものの扱いを書いた本はありません。この記事では、本に書かれている会計の原則と、太郎がそこから補った考え方を分けて載せます。

会計の分け方

  • 本に書かれていること:水津陽子さんは、施設の建設や修繕の積立金、行政からの特定の補助金などは、ふだんの運営費(一般会計)と分けて「特別会計」で管理すべきだとしています。
  • 太郎が補った考え方(本に直接の記述なし):協力金や補償金は、地域が負う環境の負担への補償や、地域の環境整備という目的がはっきりしたお金です。行事費や事務用品代と混ぜると使い道が見えにくくなり、使い込みや不信のもとになります。そのため「○○施設 地元還元金特別会計」のような別会計を作るか、一般会計の中でも科目と明細をはっきり分けて管理するのがよい、という考えです。

使い道の決め方

  • 本に書かれていること:紙屋高雪さんと中田実さんは、役員が住民に諮らずにお金を動かすことが不信の一番の原因になると強調し、使い道は必ず総会で決めるべきだとしています。
  • 太郎が補った考え方(本に直接の記述なし):使い道は、一部の人だけでなく住民全体の利益や安全につながるものに絞って総会に提案する。たとえば、防犯灯のLED化や防犯カメラ、防災用品、集会所の修繕やバリアフリー化、公園の清掃用具、未加入の世帯も含めた全世帯への防災用品の配布などです。役員への高い報酬や、一部の人だけの飲食や親睦に使うのは避けるべきだ、としています。

会員への説明と公開

  • 本に書かれていること:紙屋高雪さんは、会計がわかりにくいことが退会や批判の大きな理由になるとし、自分が役員をしていた自治会で、会計の中身を全戸に配る広報紙に載せていた例を紹介しています。水津陽子さんは、領収書と帳簿をそろえ、決算書を配り、会計監査を行って説明責任を果たすことが、不祥事を防ぎ信頼を得るのに欠かせないと説いています。
  • 具体的なやり方:毎年の総会で、一般会計とは別に特別会計の決算書と残高証明書を配って報告する。「○○事業費」のような大まかな書き方をやめ、何にいくら使ったかを領収書の裏付けのある明細で示す。監事に通帳と領収書を照らし合わせてもらい、監査報告を付けて公開する。

もめごとの例

  • 会のお金の使い込み:紙屋高雪さんの『どこまでやるか、町内会』では、大阪市の市営住宅の自治会で、元会長が会費などを使い込んだ疑いで逮捕された事件(2014年)が紹介されています。役員が会のお金や集会施設を自分のもののように使い、住民が役員を辞めさせた例も挙げられています。
  • 使い道がわからないことによる不信:集めたお金や行政から受け取ったお金が何に使われたかわからない、役員が勝手に使っているのではないか、という疑いから、会費の不払い、集団での退会、裁判にまで進む例が多くあります。
  • 目的外の使い道をめぐる裁判:佐藤文明さんと中田実さんの本では、会費を特定の神社の維持費などに回したことについて、信教の自由に反するとして住民が訴え、違法とされた裁判例に触れています。

浜区の場合(編集部注)

浜区はこれまでも協力金などを受け取ってきました。2027年の清掃工場の建て替えで新しい協定を結べば、そのお金をどう管理し、どう使い、どう公開するかが課題になります。浜区の規約では、会費のほか、活動に伴う収入やその他の収入も区の資産になり(第29条)、事業計画と予算は区長が作って、年度が始まる前に総会の議決を経て決めます(第33条)。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • 大きなお金を持たない方がよいとする立場:紙屋高雪さんは、行政や事業者からのお金が絡むと、役員の使い込みや私物化が起きやすいと強く警告します。帳簿の完全な公開と総会での管理を求める一方、もめごとのもとになる大金や重い事業を扱わない「ミニマム町内会」を提案しています。佐藤文明さんは、補償金のようなお金が一部の有力者や役員の利益になる構造を厳しく批判し、会計の徹底した公開と住民一人ひとりの権利を守ることを求めています。
  • 会計のルールで透明にする立場:水津陽子さんは、目的のあるお金は特別会計にまとめ、事業ごとの収支を見えるようにする実務的なルールを示しています。
  • 総会での話し合いを重く見る立場:中田実さんは、お金の使い道や管理を役員だけで決めず、総会で住民が話し合って決めることを何より重視しています。

出典

  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 玉野和志『町内会』
  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 5)迷惑施設の地元として協定を結ぶときのコツ

答え:総会で決め、法人の名前で結び、記録を残して引き継ぐことが基本です。 協定の中身では、行政が負うべき責任と町内会が協力する範囲をはっきり分けておきます。

協定を結ぶときの基本

  • 対等な立場で、役割をはっきり分ける:町内会は行政の命令を受ける下部組織ではなく、住民の利益を代弁する組織です。環境の保全、安全の管理、公害の防止など、本来は行政が負う責任と、町内会が協力する範囲を協定の中で線引きし、ただ働きや不当な負担を押し付けられないようにします。
  • 総会で決める:会長や一部の役員だけで決めると、あとで「独断だ」「裏で取り引きがあったのではないか」と住民の不信を招きます。説明会やアンケートで住民の考えを聞き、総会で話し合って決めてから結ぶのが原則です。
  • 法人の名前で結ぶ:会長個人の名前ではなく、認可地縁団体(法人になった町内会)の名前で結ぶと、外からの信用が高まり、契約の当事者としての立場もはっきりします。

代表者が代わったときの引き継ぎ

  • 法人名や役職名で結ぶ:「山田太郎」個人ではなく、「認可地縁団体○○町内会 代表者○○」や「○○町内会長」として結んでおけば、代表者が代わっても協定はそのまま会に引き継がれます。代表者が代わったら市に届け出ます(質問2を参照)。
  • 記録を残して引き継ぐ:会長の記憶や個人のメモに頼ると、代表者が代わったときに「当時の約束」がうやむやになります。協定書、覚書、交渉の記録、総会の議事録をそろえて保管し、次の役員と総会へ確実に引き継ぎます。

協定の中身の例(編集部注)

次の3項目は、太郎が本の考え方をもとに組み立てた例です。13冊のどれかに直接書かれているとは限りません。協定を考えるときの手がかりとして載せます。
  • 有効期間:期間を3〜5年ほどに区切り、満了前に申し出がなければ自動で更新する。ごみ焼却場のように何十年も動く施設では、永久の約束にせず「○年ごとに協議し直す」と決めておく。
  • 見直しの条件:期間の途中でも、悪臭、騒音、振動などの公害が出た、ごみの搬入量が大きく増えた、法律や基準が変わった、といった場合は、町内会からいつでも協議し直しを求められるようにする。
  • 約束が守られないときの備え:排ガス、焼却灰、水質、騒音などの測定結果を定期的に公開させ、住民代表や専門家が加わる協議会を定期的に開くよう決めておく。約束が破られたときは、町内会から改善を求める、改善が確かめられるまで操業を止めるよう求める、損害の補償や元に戻すことを求める、といった手順を決めておく。

浜区の場合(編集部注)

浜区は昭和43年に、ごみ焼却場について全24条の契約書(原契約書)を結びました。その後、約束が守られないことが続き、交渉と裁判を重ねてきました。2027年には清掃工場の建て替えがあり、新しい協定を結ぶ最後の機会と考えられています。くわしい経緯は浜区クロニクル(会員向け)をご覧ください。いまの浜区の規約では、区を代表するのは区長で(第11条)、区の目的の一つに行政との協議と協力を進めることを挙げています(第1条)。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • 行政の責任を重く見る立場:紙屋高雪さんは、行政が迷惑施設などの問題を町内会に押し付け、ただ働きの下請けとして使う構造を強く批判します。施設や環境の責任はまず行政が負うべきで、町内会は重い義務を負わない関わり方にとどめるべきだと論じています。佐藤文明さんは、行政と一部の地域の有力者や役員による密室での交渉や、住民を置き去りにした協定を強く警戒します。反対する住民の意思も尊重するため、情報を徹底して公開し、総会などで住民の意思を確かめることが欠かせないと主張します。
  • 協働の相手として役割を分ける立場:水津陽子さんは、行政と町内会を対等な協働の相手ととらえ、役割と責任をルールではっきり分ける現実的な方法を提案します。ITで情報共有の手間を減らし、役員の負担を抑えながら合意を作ることを勧めています。
  • 住民の話し合いを重く見る立場:中田実さんは、町内会を住民自治と暮らしを守る拠点として重視します。公害や施設の設置についても、住民自身が総会などの手続きを経て行政と話し合い、合意を作っていく過程に意味があるとしています。
  • 手続きを確実にする立場:『自治会町内会等法人化の手引き』は、個人の名前ではなく法人の名前で財産を持ち、契約や協定を結ぶ手続きを確実に行うよう求めています。

出典

  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 水津陽子『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 岩崎信彦、上田惟一、広原盛明、鯵坂学、高木正朗、吉原直樹 編『増補版 町内会の研究』(御茶の水書房、2013年)
  • 玉野和志『町内会』
  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 4)持ち主と使う人が違う集会所の修理代は誰が出すか

答え:日々の管理費は使う町内会、建物の大きな修繕は持ち主の市、と分けるのが一般的です。 ただし、お金を出した団体、登記上の持ち主、使う町内会がばらばらだと、境目があいまいになってもめやすくなります。前もって文書で取り決めておくことが大切です。

誰が負担するのが一般的か

  • 日々の管理費(電気代、水道代、掃除代、消耗品、小さな補修):実際に使っている町内会が、会費や利用料から払うのが一般的です。
  • 大きな修繕(建物の構造にかかわる修理、耐震補強、建て替え):持ち主である市が公費で負担するか、市の補助制度を使って市と町内会(またはお金を出した団体)で分けるのが一般的です。

負担の決め方

  1. 関係者で話し合って境目を決める:たとえば「1回○万円未満の小さな修理は町内会、それ以上の構造の修理は市」のように、金額や工事の種類で線を引きます。
  2. 町内会の総会で決める:町内会が負担する条件は、総会で話し合って会員の合意を得ます。

文書にする方法

管理の協定書や覚書、無償で借りる契約(使用貸借契約)などの形で文書にします。入れておきたい項目は次のとおりです。
  • 建物と土地の持ち主と、管理の責任がどこにあるか
  • 日々の管理費を誰が払うか
  • 壊れたときや古くなったときの修繕費の分け方と、事前に話し合う手順
  • 会員でない住民が使うときの条件や利用料
  • 協定の有効期間と見直しのやり方

起こりがちなもめごと

  • 大きな修繕の押し付け合い:古くなって高い修理が必要になったとき、市は「使っている町内会が積立金で直すべきだ」、町内会は「持ち主の市が税金で直すべきだ」と言い合いになります。
  • 会員でない住民の利用:維持費を町内会費から出していると、退会した人や未加入の人に「会費を払っていないから使わせない」と言いたくなります。しかし相手からは「市の施設なのに締め出すのはおかしい」と反発され、市への苦情や裁判に発展した例があります。
  • お金の流れが見えないことによる内部の対立:管理の補助金や利用料の会計がわかりにくい、一部の役員が施設を私物化している、といったことから住民の不満が高まり、総会が混乱することがあります。

浜区の場合(編集部注)

浜区の区民センター本館は、まさにこの形です。浜区クロニクルによると、建てるお金は清掃事務組合が出し、建てたのは泉南市で、登記も泉南市の名義です。さらに老人集会所の名前が付いたため、市の中で管理を受け持つ課も変わりました。小寺区長の時代に「建物本体は市の責任、消耗品や備品は浜区の負担」という考え方で整理されています。昭和58年に泉南市、阪南町、清掃事務組合の三者が結んだ維持管理の覚書では、維持管理費を浜区の代表者も加わった話し合いで年度ごとに決めることになっていました。浜区の規約では、区の目的の一つに「所有する資産または受託した施設の管理及び運営」を挙げています(第1条)。男里浜区規約・細則(浜区公式サイト) くわしい経緯はクロニクル(会員向け)をご覧ください。この段は本の内容ではなく、編集部が補ったものです。

本によって評価が違うところ

  • 持ち主と行政の責任をはっきりさせる立場:紙屋高雪さんは、行政が持つ施設の修繕は行政が税金で行うべきで、町内会に無償で押し付けるのはおかしいと批判します。町内会は重い財産管理を抱えない「ミニマム町内会」を目指すべきだと論じています。佐藤文明さんは、行政が建物にかかわりながら管理や維持費を町内会にあいまいに頼る関係を「行政の下請け」として問題にし、契約とお金の流れをすべて公開するよう求めます。公の財産や補助金が使われている以上、一部の人の私物化や未加入者の締め出しにつながってはならない、という考えです。
  • 協定で役割を分ける立場:水津陽子さんは、行政と町内会が対等な相手として協定を結び、役割と費用を分ける現実的な方法を提案します。補助制度を上手に使いながら、役員の負担を減らす管理のルールを整えることが大事だとしています。
  • 住民で管理することに意味を見る立場:中田実さんは、集会所を住民自身で管理することは地域の自治の大事な拠点になると評価します。管理費や運営でもめたときも、総会での話し合いで解決すべきだと論じています。

出典

  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 水津陽子『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 玉野和志『町内会』
  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 3)個人名義の財産を法人の名前に移すには

答え:土地と建物は法務局で登記を、預金口座と契約は銀行や相手の会社で名義変更をします。 会長や役員の個人名義のままにしておくと、その人が亡くなったときに町内会の財産が個人の遺産として扱われるおそれがあります。法人になった大きな目的の一つは、これを防ぐことです。

土地と建物

  • ふつうのやり方:法務局で、元の名義人(会長や役員、共有の人たち)から「認可地縁団体○○町内会」へ名義を移す登記をします。市が出す認可地縁団体の証明書、町内会の印鑑証明書、元の名義人の権利証や印鑑証明書などが要ります。
  • 名義人が多すぎる、行方がわからない場合の特例:元の名義人が亡くなって相続人が大勢いる、行方がわからない、といった場合のために、地方自治法に登記の特例があります。総会で決めてから市に申請すると、市が3か月以上の公告をします。その間に誰からも異議が出なければ、町内会だけで登記を申請できるようになります。

預金口座

個人名義(たとえば「山田太郎」や「○○町内会 会長 山田太郎」)の口座を、法人名義に変えるか、法人名義で新しく口座を作ってお金を移します。銀行には、認可地縁団体の証明書、規約、町内会の印鑑と印鑑証明書、代表者の本人確認書類などを出します。

契約

防犯灯の電気、施設の管理、保険などの契約は、それぞれの会社に名義変更を届け出ます。

気をつけること、よくあるもめごと

  • 相続人との話し合い:個人名義の土地や集会所は、名義人が亡くなると親族の遺産に入ったり、その人の借金のかたに差し押さえられたりするおそれがあります。特例の公告中に相続人から「うちの土地だ」と異議が出ると、特例は使えなくなり、裁判などで決着をつけることになります。公告の前に、名義人の家族に事情をていねいに説明しておくことが大切です。
  • 口座の凍結:名義人の役員が亡くなると、口座が凍結されて町内会のお金が引き出せなくなります。また最近の銀行は本人確認が厳しく、規約、証明書、総会議事録に書かれた代表者の名前が一致しているかを細かく確かめます。
  • 代表者交代の届け忘れ:会長が代わったのに市へ届け出ていないと、市の記録が前の会長のままになり、銀行での手続きなどがすべて止まります(質問2を参照)。

浜区の場合(編集部注)

浜区クロニクルによると、区民センター本館は清掃事務組合がお金を出し、泉南市が建てたもので、登記も泉南市の名義です。個人名義の財産を法人に移すという話とは事情が違います。いまの浜区の規約では、区の資産は区長が管理し、管理の方法は役員会で決めます(第30条)。財産目録に載った資産のうち総会で定めたものを売ったり担保にしたりするには、総会で4分の3以上の賛成が要ります(第31条)。この段は本の内容ではなく、編集部が補ったものです。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • 登記と手続きを確実にすすめる本:『自治会町内会等法人化の手引き』は、相続のもめごとや差し押さえを防ぐために、法人名義での登記(特例を含む)をすすめ、手続きを確実に行うよう強調しています。
  • 法人化の危うさを指摘する本:佐藤文明さんは、名義を法人に移すのはもめごと防止に見えて、一部の役員の支配を強めたり、加入を強いる道具になったりする危険があると警告します。紙屋高雪さんは、登記や財産管理の手続きは無報酬の役員に重い負担になると指摘し、そもそも高価な不動産を持たない「ミニマム町内会」を勧めます。
  • 仕組みを整えて負担を抑える本:水津陽子さんは、個人のお金と会のお金が混ざるのを防ぐ点で法人化を評価しつつ、役員が疲れないよう、ITや引き継ぎの手引きと組み合わせることを提案しています。
  • 決め方を重く見る本:中田実さんは、相続や差し押さえの心配がなくなる点を認めたうえで、財産の処分や名義の変更は役員だけで決めず、総会で話し合って決めるべきだと強調しています。

出典

  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 2)法人になった町内会が毎年やること

答え:年1回の総会、財産目録と会員名簿の備え置き、届け出が必要です。 認可地縁団体(法人になった町内会)は、ふつうの町内会と違って地方自治法で決められた義務を負います。浜区も2026年4月に認可地縁団体になったので、ここに書くことはすべて浜区に当てはまります。

毎年やること

  • 通常総会を年1回以上開く(地方自治法第260条の13):前の年度の事業報告と決算、新しい年度の事業計画と予算、役員の選任などを決めます。年度が終わってから3か月以内に開く町内会が多いそうです。
  • 財産目録を作り、事務所に置いておく(第260条の4):会が持っている財産の一覧です。毎年作り直します。
  • 会員名簿を事務所に置き、いつも最新にしておく(第260条の4):加入、退会、転居があるたびに直します。個人情報なので、保管にも気をつけます。

変えるときに必要な手続き

  • 代表者が代わったら市に届け出る:会長の交代のほか、会の名前、事務所の場所、目的が変わったときも届け出ます。代表者の交代では、選んだことがわかる総会の議事録などを付けます。
  • 規約を変えるときは市の認可を受ける(第260条の3):総会で会員の4分の3以上の賛成を得たうえで市の認可を受けます。認可を受けるまで、変えた規約は効力がありません。

やり忘れるとどうなるか

  • 過料を科されることがある:財産目録を作らない、うその記載をする、届け出を怠るといった場合、代表者が過料(行政が科すお金の罰)を受けることがあります。
  • 新しい代表者が会を代表できなくなる:代表者の交代を届け出ないと、市の記録は前の代表者のままです。銀行口座の名義変更、土地や建物の登記、契約などで、新しい代表者として手続きができなくなります。
  • 認可を取り消されることがある:長いあいだ活動していない、認可の条件を満たさなくなった、といった場合です。
  • 総会を開かずに決めたことは、あとで争いになる:役員だけで事業やお金の使い方を決めると、その決定の効力を会員から争われたり、役員が責任を問われたりするおそれがあります。

浜区の場合(編集部注)

浜区の規約では、通常総会を毎年度の決算が終わってから90日以内に開きます(第16条)。事業報告、収支計算書、財産目録は区長が作り、監事の監査を受けて、年度が終わってから90日以内に総会の承認を受けます(第34条)。規約を変えるには、総会で総会員の4分の3以上の賛成を得たうえで、泉南市長の認可を受けます(第36条)。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

本によって評価が違うところ

  • 決まりどおりの運営をすすめる本:『自治会町内会等法人化の手引き』は、届け出、過料、登記の手続きをくわしく説明し、もめごとを防ぐために法律どおりに運営するよう求めています。水津陽子さんは、法人化や名簿の管理は会の透明性を高めると評価したうえで、役員の負担が重くなりすぎないよう、デジタル化などで仕事を減らす必要があると説きます。
  • 法人化の重さを心配する本:佐藤文明さんは、法人化には財産を個人の名前で持つもめごとを防ぐ面があると認めつつ、一部の人の支配を強め、加入の強制や仲間はずれの道具になりかねないと警告します。紙屋高雪さんは、厳しい総会運営や財産と名簿の管理は、無報酬の役員に重い仕事を負わせると指摘します。
  • その中間:中田実さんは、法人になっても町内会は住民が自分たちで運営する組織であり、総会での話し合いで物事を決めることが大事だと説きます。

出典

  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(地縁団体研究会 編、ぎょうせい)
  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 1)町内会に入るのは義務ですか

答え:義務ではありません。 入るかどうかは住民が自分で決めます。いったん入った人も、いつでも抜けられます。 最高裁判所は2005年4月26日の判決で、自治会は加入を強制できない団体だと示しました。退会は、本人が「やめます」と伝えるだけで成り立ちます。市町村によっては加入を勧める条例がありますが、加入をすすめて協力を呼びかけるもので、加入を義務にする力はありません。

浜区の場合(編集部注)

浜区は2026年4月1日に認可地縁団体になりました。地方自治法には、認可地縁団体は区域に住む人の加入を正当な理由なく断ってはならない、という定めがあります(第260条の2第7項)。これは浜区の側の義務です。住民に加入の義務が生じるわけではありません。浜区の規約でも、入会の申し込みがあれば正当な理由なく断らないと定めています(第7条)。退会は、区長に退会届を出すか、区域の外へ引っ越せば成り立ちます(第8条)。この段は本の内容ではなく、編集部が補ったものです。 男里浜区規約・細則(浜区公式サイト)

入らない世帯や抜ける世帯への、ほかの町内会の対応

  • ごみ集積所だけ一緒に使う:会には入らなくても、集積所の掃除当番や実費だけは分担してもらう決まりを作る。ごみの収集はもともと市の仕事です。未加入を理由にごみを出させないと、深刻な近所トラブルや人権問題になりかねません。
  • 役員の負担を減らす:抜ける理由で一番多いのは「役員や班長が回ってくるのがつらい」です。高齢の人や家庭の事情がある人の役員を免除する決まりを会則に入れる。広報配りを外に任せる、会費をキャッシュレスで集めるなどして、役員の仕事そのものを減らす。
  • 手伝いを自由にする:会費や役員の割り当てをやめ、やりたい人ができるときに手伝う形に変えた町内会もあります。
  • 勧誘を押し付けない:戸別訪問で強く誘うのをやめる。会計や活動を公開したビラを配る。行事や防災訓練で気軽に顔を合わせる場を作り、自分から入りたくなるようにする。

出典

  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』

2026-10-04町内会Q&A(太郎に聞く 0)町内会の本は、どんな立場で書かれているか

町内会について書かれた本を13冊、NotebookLM(Google の資料読み取りAI。チームしずくでは「太郎」と呼んでいます)に読ませ、町内会のことを質問しました。その答えを浜区向けに整理したのがこのシリーズです。答えは本に書かれていることだけをもとにしています。 13冊は、著者によって町内会の見方が大きく違います。このあとのQ&Aを読む前に、立場の違いを3つの論点で整理しておきます。

1. 加入と組織のあり方

  • 町内会は、やりたい人だけの集まりにすべきだという立場:紙屋高雪さんは、2005年の最高裁判決をよりどころに、加入も退会も住民の自由だと強調します。輪番で役員や集金を回すやり方を批判し、会費も義務も手当もない「ミニマム町内会」を勧めています。佐藤文明さんは、加入を強いる空気やプライバシーの侵害を問題にし、全戸加入を前提にした仕組みを点検し直すよう求めます。
  • 町内会は地域に必要な仕組みとして、直しながら続けるべきだという立場:中田実さんは、町内会を昔からの地域の共同組織の流れにある住民自治の場ととらえます。村八分のような扱いは否定したうえで、話し合いで合意を作り、防災や美化を担う組織として続けていく道を示します。玉野和志さんは、町内会を住民が暮らしを守るために作ってきた地域の共有財産とみて、全戸加入が崩れつつあるいま、その働きをどう作り直すかを論じます。

2. 行政から頼まれる仕事

  • 下請け扱いを批判する立場:佐藤文明さんは、明治の税の取り立てから戦時中の国策への動員まで、町内会が行政の末端として使われてきた歴史をたどって批判します。紙屋高雪さんは、行政が役員にただ働きを押し付けている現実を挙げ、頼まれ仕事を断るか整理すべきだと主張します。
  • 役割分担を決めて付き合う立場:水津陽子さんは、頼まれ仕事が増えて役員が疲れている実態を調査の数字で示します。そのうえで、川崎市などの指針を例に、行政の依頼をルールで絞り、対等な関係で協力する方法を提案しています。

3. 役員の負担を減らす方法

  • 行事そのものを減らす(紙屋高雪さん、佐藤文明さん):道具を入れる前に、大きな運動会や祭り、前例どおりの会議、義務の役員回しをやめることが根本の解決だと説きます。
  • ITで手間を減らす(水津陽子さん):LINEのグループ、Zoom、電子決済、町内会向けアプリを使い、回覧や手渡しの集金をなくします。若い世代が参加しやすくなる点を重く見ています。
  • 法人になって土台を固める(『自治会町内会等法人化の手引き』):認可地縁団体になれば、集会所や土地を個人の名前で登記することから起きるもめごとを防げます。契約の主体になれて、外からの信用も得られます。浜区は2026年4月にこの形になりました。

出典

  • 紙屋高雪『町内会は義務ですか?』『どこまでやるか、町内会』
  • 佐藤文明『あなたの町内会総点検』
  • 中田実『町内会のすべてが解る!「疑問・難問」100問100答』
  • 岩崎信彦、上田惟一、広原盛明、鯵坂学、高木正朗、吉原直樹 編『増補版 町内会の研究』(御茶の水書房、2013年)
  • 玉野和志『町内会』
  • 水津陽子『自治会町内会お悩み解決実践ブック』『令和アフターコロナの自治会町内会運営ガイドブック』『自治会町内会負担軽減 IT活用事例ハンドブック』
  • 『自治会町内会等法人化の手引き』(ぎょうせい)
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