現状役員のなり手がいない 負担の中身と自治体の手
総会で次の役員がなかなか決まらない。くじ引きや順番で何とか決めても、引き受けた人は「仕事を続けながら一年もつだろうか」と不安を抱える。こうした話は、一つの町だけのものではありません。国や自治体の調査には、なり手不足がどれくらい広がっているのか、役員の負担が何でできているのかを示す数字が出ています。自治体が負担を減らすために打っている手もあります。自分の町内会の「重さ」がどこから来ているのかを見分けるために、それらを順に並べます。
全国の市区町村が挙げる課題
内閣府男女共同参画局が市区町村に尋ねたアンケート(2017年3月の報告書、回答1,157団体)では、自治会の今の課題として「役員・運営の担い手不足」を挙げた市区町村が86.1%、「役員の高齢化」を挙げたところが82.8%ありました。この数字は、総務省の「地域コミュニティに関する研究会」が2022年4月にまとめた報告書に引用されています。 同じ報告書によると、2010年度から2020年度まで毎年度の加入率をつかんでいる600市区町村では、自治会などの平均加入率(世帯単位)が78.0%から71.7%に下がりました。加入する世帯が減れば、役を回す相手も減ります。横浜市の会長アンケートから
横浜市は4年ごとに、市内すべての自治会町内会長にアンケートをしています。2025年に行い2026年1月に報告書が出た最新の調査(対象2,827団体、回収率78.7%)では、運営上の課題として「役員のなり手が少ない」を選んだ会長が86.1%で最も多く、前回の令和2年度調査より8.2ポイント増えました。 会長の年齢は70代以上が56.4%です。会長の任期を規約で決めている団体のうち、任期1年が40%、2年が55.5%でした。会長の選び方は立候補・推薦が全体の66%ですが、マンションの区域に限ると立候補・推薦が36.8%、順番に回す輪番制が35.1%で、ほぼ並んでいます。 自由記述には、組長(班長)を順番に回している団体で「順番の来る直前に退会してしまう世帯がある」という声も載っています。輪番制は公平に見えますが、役を避けたい人が会そのものから離れるきっかけにもなりえます。 京都市が2021年度に行ったアンケートでも、町内会長は「持ち回り」が約半数、「任期1年」が7割以上でした。「役を担える世帯がない」と答えた町内会は7割ありました(京都市の審議会資料による)。負担の中身は何か
役員の仕事は、町内会が自分で決めた行事だけではありません。総務省の報告書は、回覧板や掲示板での行政の連絡、行政が頼む委員の推薦、防災訓練、防犯灯やごみステーションの管理などを「行政協力業務」と呼び、自治会の負担になっていると整理しています。とくに負担感が強いものとして、委員の推薦、募金集め、広報物の配布・回収、会議への出席、行事への動員、いくつもの団体の会費や役を重ねて負うことを挙げる意見も紹介しています。 横浜市の調査では、行政からの依頼について「負担だと感じるものがある」と答えた会長が77.9%で、前回の61.1%から増えました。負担だと感じる依頼の中では「委嘱委員の推薦」が50.1%と約半分を占めます。委嘱委員とは、民生委員のように行政から頼まれて地域で務める委員のことです。自由記述には「なり手が中々見つからず、いつも同じ人にお願いしている」という声があります。共働きと高齢化の両方から
なり手不足の背景として、総務省の報告書は暮らし方の変化を挙げています。15~64歳の女性の就業率は2001年の57.0%から2019年の70.9%に上がりました。65~69歳の就業率も2010年の36.4%から2020年の49.6%に上がっています。平日の昼に家にいる人が、若い世代でも高齢の世代でも減っているわけです。 報告書はさらに、特定の人に負担が偏る「役員中心主義」の運営と、共働きや単身世帯が増えても行政が従来どおりの頼み方を続けてきたことを、負担が重くなる原因の一部としています。住民の側の事情だけでなく、頼む側の仕組みも問われています。自治体の取り組み
総務省が全国の市区町村(1,741団体)に尋ねた調査では、自治会などの負担軽減に取り組んでいると答えたのが1,111団体、必要だと感じながら実施していないのが548団体でした。取り組みの中身は、集会に使う場所の使用料の減免などが556団体、役所の担当窓口の一本化が328団体、広報物を役所が直接配ることが276団体の順です。 報告書は、具体例として次のようなものを挙げています。- 品川区:自治会への依頼業務を調べたうえで条例を定め、依頼に対する負担感がやや下がった
- 川崎市:回覧・掲示や委員就任を頼む基準をガイドラインで決め、役所全体で依頼をまとめて一本化した
- 加古川市・八王子市:ごみステーションの清掃や広報誌の配布をシルバー人材センターに任せた
- 開成町(神奈川県):広報誌の配布を全戸へのポスティングに切り替えた
見方が分かれるところ
輪番制や任期1年は、負担を一人に集めないための工夫です。一方で、横浜市の調査では、デジタル化を進めていない理由の一つとして「役員の任期が1年のため、改善意識が低い」という声が出ています。毎年人が替わると、仕事の見直しが進みにくいという面があります。任期を長くすれば経験は積めますが、引き受ける人の負担は重くなります。どちらがよいかは、その町内会の世帯数や年齢の構成によって変わります。 行事を減らすことにも両面があります。役員の手間は減りますが、行事は住民が顔を合わせる数少ない機会でもあります。横浜市の調査にも「高齢化が進めば進むほど顔を合わせることが重要」という声があります。考えるための問い
- 自分の町内会の役員の仕事のうち、町内会が自分で決めたものと、行政などから頼まれているものは、それぞれどれくらいありますか。
- 輪番制や任期の決め方は、今の世帯の暮らし方に合っていますか。役員にならなくても手伝える形はありますか。
- やめても困らない行事や会議はありますか。逆に、顔を合わせるために残したいものはどれですか。浜区の場合はどうか、考えてみてください。