現状赤い羽根や日赤の会費を町内会費と一緒に集めてよいか
町内会の会計を見ると、会員から集めたお金の一部が、赤い羽根共同募金、日本赤十字社(日赤)の会費(社資)、社会福祉協議会(社協)の会費として、外の団体に渡っていることがあります。集める側はこれを地域福祉の財源だと説明し、払う側からは寄付を強制されているという声が出ています。自治体や募金団体の資料、共同募金の統計、2007年の大阪高裁判決、2025年の国会質問と政府答弁をもとに、町内会を通して寄付が集まる仕組みと両方の言い分を並べます。
町内会を通して集まるお金
静岡県袋井市は、自治会に集金の協力を頼んでいるものとして、2026年度の一覧を示しています。1世帯あたり日赤の会費500円、市の社協の会費500円、赤い羽根共同募金が目安240円程度、歳末たすけあい募金が目安110円程度で、合わせると1,350円ほどです。市は「あくまでも任意」と書いています。 横浜市旭区で2023年に自治会長あてに出された日赤の会費集めの依頼文は、差出人が日赤神奈川県支部の区の地区委員会で、その委員長は旭区長です。文書は「任意の会費であり、決して強制ではありません」と書いたうえで、自治会ごとの目安額の出し方を二通り示しています。戸別に集める自治会は前年度の実績の85%、自治会費から寄付する自治会は、「地域活動推進費」の申請世帯数の95%に120円を掛けた額です。会費からまとめて払う方式が、頼む側の書類に初めから用意されているわけです。共同募金の3分の2は家庭から
中央共同募金会の統計によると、2024年度の共同募金(一般募金と地域歳末たすけあい募金)は全国で約165億2千万円でした。そのうち家庭から集める戸別募金が約109億6千万円で、66.3%を占めます。街頭募金は1.7%です。都道府県別では、大阪府で64.4%、滋賀県で62.9%が戸別募金でした。共同募金会旭区支会の依頼文は、目標額を世帯数で割った「目安額」を示しつつ、それは「決して『割り当て額』ではありません」と書いています。大阪高裁が問題にしたこと
滋賀県甲賀市の希望ヶ丘自治会の事件は、このサイトの記事「町内会・自治会は法律上どんな団体か 加入・退会・会費」でも紹介しました。2006年3月の総会で会費を年2,000円上げ、その分を共同募金、社協、日赤などへの寄付に充てると決めた事件です。2007年8月24日の大阪高裁判決は、この決議を無効としました(2008年4月に確定)。 判決が問題にしたのは、寄付を集めることそのものではありません。寄付に応じるかどうかは各人の考えで決まるので会員の判断を尊重すべきなのに、寄付を一律に会費として集めると、その判断の機会を奪う。そのうえこの自治会は、入らない世帯には配布物を配らず、災害のときも協力せず、新しいごみ集積所を使わせないと決めていたので、会員は事実上やめられない。この二つが重なった強制は社会的に許される限度を超える、という理屈です。 大野拓哉氏の論文によると、全国社会福祉協議会は判決直後の2007年9月の通知で、判決は自治会による一括の集金を違法としたものではないとしました。確定後の2008年4月の通知では、これを「当該自治会固有の問題」としつつ、任意であることの担保と、住民の自発的な意思の尊重を求めています。集める側と払う側の言い分
集める側の言い分は、希望ヶ丘自治会の主張によく表れています。高齢化で寄付金を集めて回る役員の負担が重くなった、寄付金は地域の役に立っている、規約に従い大多数の賛成で決めた、というものです。集金の手間は数字にも出ています。鹿児島市の2023年の調査では8割を超える町内会が会費をすべて集金して回っており、役を務めた市民が負担に感じた業務で最も多かったのは「町内会費(募金)の集金」でした。 払う側の疑問は国会でも取り上げられました。2025年5月、浜田聡参議院議員は質問主意書で、断ると地域で孤立するので決まった額を払わざるを得ない、住民の同意なく自治会費から社協へお金が出ていて知らない住民もいる、という相談を紹介しました。同年6月の政府の答弁書は、社会福祉法第116条が共同募金は寄附者の自発的な協力を基礎とすると定めていることを挙げ、強制にわたらず適切に募集されるべきだとしました。共同募金会には不当寄附勧誘防止法が適用され、困惑させられて寄付をした人は取り消せる場合があるとも答えています。 町内会の側からの疑問もあります。千葉県松戸市の町会は、市から加入世帯数に300円を掛けた交付金を受け取る一方で、社協に同じく1世帯300円の会費を払っており、交付金がそのまま社協に流れていると市に指摘しました。市は「真摯に受け止め」ると答えています。会費の支出のうち寄付や募金がどれだけを占めるかを示す全国の調査は、確認できませんでした。考えるための問い
- 町内会の決算書で、外の団体に渡しているお金(募金、日赤、社協など)は、会の活動費と分けて書かれていますか。
- 募金に応じたくない会員がいるとき、その分を払わずに済む方法が用意されていますか。
- 浜区の場合はどうか、考えてみてください。会費の使いみちを総会でどう決めているでしょうか。
出典
- 大野拓哉「地域福祉と住民組織──『甲賀市希望ヶ丘自治会事件』控訴審判決を手がかりにして」(弘前学院大学社会福祉学部研究紀要 第14号・2014年)
- 令和6年度 共同募金統計〔募金実績・募金方法別〕(中央共同募金会)
- 10 その他(会費・共同募金)(袋井市・2026年度)
- 令和5年度日本赤十字社会員増強運動(会費募集)について(日本赤十字社神奈川県支部横浜市地区本部旭区地区委員会・2023年)
- 令和5年度共同募金運動へのご協力について(共同募金会旭区支会・2023年)
- 赤い羽根共同募金の強制徴収が不当寄附勧誘防止法違反となる可能性に関する質問主意書(参議院・2025年)
- 同 答弁書(内閣・2025年)
- 町会・自治会等交付金と社会福祉協議会への会費について(松戸市 意見交換会テーマと回答・2026年度)
- 町内会実態調査・町内会についての市民意識調査 報告書 概要版(鹿児島市・2023年)