将来外国人住民と町内会 団地の経験と国の計画
日本に住む外国人は、2025年末に412万人を超えて過去最多になりました。大阪府は東京都に次いで多く、37万人あまりが暮らしています。町内会のごみ出しの決まりや回覧板、防災訓練は、日本語が読めて同じ習慣をもつ住民を前提にしてきました。その前提が通じない隣人が増えたとき、町内会に何ができるのか。国の計画と、外国人住民の多い団地で試されてきたことを並べます。
在留外国人はどれだけ増えたのか
出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人で、前の年より35万6,418人(9.5%)増えました。留学生や働く人、永住者などと、特別永住者を合わせた数です。2020年末は288万7,116人で前の年より減っていたので、5年で約1.4倍になりました。 国籍では中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ネパールの順に多く、1年で大きく増えたのはネパール、インドネシア、中国、ミャンマーです。英語や中国語、韓国語の案内だけでは届かない人が増えています。在留資格では「永住者」が約95万人で最も多く、総務省も永住者の増加を「緩やかな定住化の傾向」と見ています。国の計画は町内会に何を期待しているか
総務省は2006年3月に「地域における多文化共生推進プラン」をつくり、2020年9月に改めました。自治体が外国人住民への施策を考えるための手引きで、施策を「コミュニケーション支援」「生活支援」「意識啓発と社会参画支援」「地域活性化の推進やグローバル化への対応」の4つに分けています。 改訂版には町内会にかかわる記述がいくつもあります。ごみの出し方など生活ルールをめぐるもめごとは生活習慣の違いから起きることが多いとして、地域のルールを知らせる説明の場を自治会やNPOと組んでつくるよう求めています。自治会への外国人住民の加入を促し、自治会と連絡を取り合える仕組みをつくること、外国人住民が多い団地に相談窓口を置くことも挙げています。防災では、外国人住民を支援される側だけでなく担い手と位置づけ、外国人の防災リーダーを育てて自主防災組織への参加を促すとしています。 このプランは見直しの途中です。政府は2026年1月に「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」をまとめ、外国人が日本の法やルールを理解し守るための施策に力を入れるとしました。総務省は同年5月に研究会を開き、年度内をめどにプランのあり方を検討しています。芝園団地(埼玉県川口市)の自治会
国際交流基金によると、芝園団地では1990年代後半から中国人住民が増え、2017年12月には人口約4,800人のうち約2,500人が外国人で、その9割以上が中国人でした。60代以上の日本人と、20代後半から30代の外国人が多く住んでいます。生活習慣の違いから住民の間に溝ができ、不満が最も高まったのは2011年でした。 自治会は、外の学生団体「芝園かけはしプロジェクト」と組んで交流行事を重ね、中国人住民が先生になる中国語教室を開きました。外国人住民向けのパンフレットを両方の住民で一緒につくり、「中国版LINE」と呼ばれるアプリでも知らせを流しました。やがて中国人住民が自治会の役員を務めるようになっています。 自治会の事務局長は2019年の講演で、パンフレットには絵を多く使い、なぜそうしてほしいのか理由を書くことを勧めました。知らない習慣は、決まりを文字で並べるだけでは伝わりにくいからです。課題としては、両方の住民に共通することが少ない、人手もアイデアもない、若い日本人がいない、の3つを挙げ、「お互い静かに暮らせる関係(共存)」と「お互いに協力する関係(共生)」を分けて考えるよう呼びかけています。いちょう団地(神奈川県)の自治会とNPO
横浜市泉区と大和市にまたがる県営いちょう団地は、2011年の報告で、3,500あまりの入居世帯の2割ほどが外国籍でした。大和市にインドシナ難民の定住促進センターがあったこともあり、ベトナム、カンボジア、ラオスの出身者が多く住んでいます。 自治会は多文化共生のまちづくりを進めようとしてきましたが、担い手の日本人住民が高齢になり、運営そのものが年々難しくなって、行事も減っていると報告されています。そこを補ってきたのがNPO「多文化まちづくり工房」です。2006年に消防署と組み、地域の外国籍の若者が訳した6言語の防災パンフレットをつくりました。若者たちは防災チーム「TRYangels」として、自治会に頼まれて防災訓練に加わり、東日本大震災のときには多言語で安否を確かめ、高い階に住む日本人住民の車いすを運ぶ手伝いもしました。外国人住民が1割を超えた地方の地区
島根県出雲市の事例集(2026年2月改訂)によると、伊波野地区はほかの地域から移ってきた住民が半数を超え、外国人が1割以上を占め、自治会の加入率が下がっていました。地区は団体の紹介パンフレットを日本語、英語、ポルトガル語でつくり、文化祭の案内と会報を英語、ポルトガル語、中国語に訳して配りました。やさしい日本語の研修会や、日本人と外国人の交流会も開いています。うまくいかなかった点と残る課題
芝園団地では、住民の不満がいったん強まってから交流の取り組みが進みました。いちょう団地では、外国人住民が増える一方で受け入れる側の日本人住民が高齢になり、自治会の力そのものが落ちていました。どちらも自治会だけで解決したのではなく、学生団体やNPO、消防署の力を借りています。 なお、全国で外国人住民がどれくらい町内会に入っているかを示す公的な数字は、今回は確認できませんでした。考えるための問い
- 回覧やごみ出しの案内は、日本語が読めない人にも届く形になっているでしょうか。絵や理由を添えられるところはありますか。
- 外国人住民を「支援する相手」としてだけでなく、役員や防災の担い手として迎える用意はあるでしょうか。
- 目指すのは「お互い静かに暮らせる関係」と「お互いに協力する関係」のどちらでしょうか。浜区の場合はどうか、考えてみてください。