将来町内会はいらないのか 不要論と反論、解散の例
町内会に入らない人、やめたい人は珍しくありません。東京都が2023年に都民に聞いた調査では、町会や自治会に入っていない人の56.4%が、負担の軽い仕組みや活動の絞り込みがあっても「加入したくない」と答えました。一方で政府は、町内会を防災や清掃を担う共助の担い手と見ています。不要論とそれへの反論を並べ、実際に解散した町内会のその後と、解散せずに形を変えた例を紹介します。
断りにくさと負担の重さ
不要論の一つ目は、入るかどうかを選べるはずなのに断りにくく、入れば負担が重いというものです。最高裁判所は2005年4月、県営住宅の自治会について、強制加入の団体ではなく、規約に退会を制限する定めもない以上、会員はいつでも一方的に退会できると判断しました。法律の上では、入るのもやめるのも本人の自由です。 それでも、実際には断りにくい場面があります。滋賀県甲賀市の希望ヶ丘自治会は2006年3月の総会で、会費を年2,000円上げ、上げた分を赤い羽根共同募金などへの寄付に充てると決めました。大阪高等裁判所は2007年8月、任意であるべき寄付を会費として事実上強いる決議は会員の思想や信条の自由を侵し無効だと判断し、2008年4月に確定しています。 東京都の調査で加入者が挙げた問題点は「若者や仕事を持つ人が参加しにくい」33.0%、「当番などがあり、活動への負担感が大きい」28.8%が上位でした。役員について「負担が重いためやりたくない」は37.2%で、「時々回ってくるのは仕方がない」の42.9%と大きく変わりません。行政の下請けと、入らなくても困らない暮らし
二つ目は、行政の仕事を押しつけられているうえ、入らなくても暮らしに困らないという見方です。東京都の調査で、町会側が挙げた運営の課題には「行政からの依頼事項の負担が増加している」(34.5%)が入っています。2021年には参議院で、広報物の掲示や回覧などの「行政の下請け」的な仕事に歯止めをかけるべきではないかという質問主意書が出されました。政府の答弁書は、委託は各市町村が地域の実情に応じて適切に行うものだと答えるにとどめています。 入らない理由では「付き合いが面倒なため」30.5%に続き、「加入しなくても困らないため」29.5%、「町会・自治会があるのか分からないため」25.6%が多く挙がりました。災害のときの助け合いと、声を届ける場
これに対する反論の中心は災害時の助け合いです。2014年版の防災白書は、阪神・淡路大震災で倒れた建物から救い出されて生き延びた人の約8割が、家族や近所の住民などに助けられたという調査を紹介しています。ここでいう近所の住民は、町内会という組織として動いた人に限られません。総務省の研究会報告書(2022年)は、町内会の必要性を感じない住民も多いと認めたうえで、阪神・淡路大震災の後に自治会がないのは心細いとして新しく自治会ができた例や、東日本大震災で在宅避難の住民どうしが安否を確かめ合った例を挙げています。 行政とのつながりにも別の見方があります。同じ報告書は、町内会が自治体の仕事に深くかかわることで審議会などを通じて施策を提言しやすくなる面もあると指摘しています。下請けのような関係は見直すべきだという意見も併せて載せています。解散した町内会のその後
広島市は2021年、直近5年以内に解散した町内会の元役員3人に話を聞いています。解散の理由は、会長の後を継ぐ人がいないことでした。直前の加入率は20%から50%で、役員はほとんどが70歳以上でした。解散後については「大きな変化や問題はない」「特段、困ったことがない」、インターネットで情報が得られるので不便はないという声がある一方、災害訓練などの大事な知らせを伝える方法がない、災害時が不安だという声もありました。見守りは民生委員が、体操の集まりは社会福祉協議会が引き継いでいます。近くの町内会との合併は、範囲が広がるだけで支え合いにならないとして難しいと答えています。 いったん解散して作り直した例もあります。町内会長を約6年務めた紙屋高雪氏は、校区の行事のたびに人を出すよう求められて断り、批判を受けました。そこで町内会を解散し、義務も会費もない「新・町内会」をつくったと2016年の東洋経済オンラインの取材で話しています。解散せず形を変えた例
島根県出雲市の事例集(2026年2月改訂)には、小さな自治会どうしの合併が並んでいます。14戸と6戸の自治会は2021年に合併して役員を選びやすくなり、久多見町では1年かけて話し合い、3つの自治会を2011年度に1つにまとめて役の負担を軽くしました。高浜地区では地区の団体に役員の出し方や経費の見直しを頼み、2024年度から役員の数を減らして会費を1割下げました。川跡地区の自治協会は新しく住み始めた人に3年間の「準会員」の道を用意し、初年度の会費を免除し、各種団体の委員にもすぐには選ばないことにしました。 こうした見直しにも限りはあります。先の東京都の調査で、負担にならない範囲で参加できる仕組みがあれば入りたいとした未加入者は18.9%、活動を絞ってスリム化すればとした人は15.0%でした。考えるための問い
- いまの町内会の仕事のうち、なくなったら本当に困るものはどれで、ほかの手段で足りるものはどれでしょうか。
- 会費や当番、行政からの頼まれごとのうち、入らない人や抜ける人を生んでいるものはないでしょうか。
- 解散、合併、活動の絞り込み、準会員のような入り口づくりのうち、浜区の場合はどれが当てはまるか、考えてみてください。
出典
- 町会・自治会活動に関する調査 概要(東京都生活文化スポーツ局・2024年)
- 平成16(受)1742 自治会費等請求事件 判決(最高裁判所・2005年)
- 地域福祉と住民組織(大野拓哉・弘前学院大学社会福祉学部研究紀要・2014年)
- 自治会等の存続に関する質問主意書(参議院・2021年)
- 同 答弁書(内閣・2021年)
- 平成26年版 防災白書 自助・共助の例(内閣府・2014年)
- 地域コミュニティに関する研究会 報告書(総務省・2022年)
- 町内会・自治会等実態調査報告書 調査6(広島市・2021年)
- 善意が暴走するPTAと町内会は変われるか(東洋経済オンライン・2016年)
- 自治会に関する取組事例集 第2次改訂版(出雲市・2026年)