将来空き家が増えたとき、町内会にできることは何か 10月24日 14:24 登録
近所に、雨戸が閉まったまま何年も人の出入りがない家はないでしょうか。庭木が道にはみ出し、郵便受けにちらしがたまっていくのを見て、町内会で何とかできないかと相談を受ける役員もいるはずです。けれども空き家は、持ち主のいる個人の財産です。国の統計、空家等対策特別措置法の条文、自治体と町内会が組んだ例を並べると、町内会が気づけることは多い一方、自分で手を出せることは限られている様子が見えてきます。自分の町で空き家の話が出たとき、どこまでを町内会の仕事と考えるかを決める材料として読んでください。
空き家はどれだけ増えたのか
総務省の2023年住宅・土地統計調査(5年ごとに住宅の数や状態を調べる国の調査)によると、全国の空き家は900万2千戸で、過去最多でした。住宅全体に占める割合(空き家率)は13.8%で、これも過去最高です。2018年からの5年で51万3千戸増え、1993年からの30年でおよそ2倍になりました。 ただし、この900万戸には、入居者を募集している賃貸住宅や売りに出ている住宅、別荘も含まれます。地域で困りごとになりやすいのは、そのどれにも当たらず、使い道が決まらないまま置かれている家です。統計ではこれを「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」と呼び、2023年は385万6千戸、住宅全体の5.9%でした。1993年の148万8千戸と比べると2.6倍です。一戸建ての空き家に限れば、約8割がこの種類に当たります。放っておかれた空き家は周りに何をもたらすか
空家法は第1条で、管理されていない空き家が防災、衛生、景観などの面で地域住民の暮らしに深刻な影響を与えていると述べています。山梨県はその中身として、倒壊や屋根、外壁の落下、火災のおそれ、犯罪の誘発、ごみの不法投棄、蚊やねずみの発生と悪臭、景観の悪化、枝の越境や雑草の茂り、落ち葉の飛び散りを挙げています。盛岡市の広報紙も、市への相談で多いのは草木の茂りや害虫など管理にかかわることで、近所の住民からの相談も多いと伝えています。 挙がっている困りごとの多くは、ごみ集積所、夜道の防犯、防災と、もともと町内会が受け持ってきた分野と重なります。空き家の話が町内会に持ち込まれやすいのは、このためです。法律は誰に何を求めているか
2014年に制定された空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は、まず持ち主(法律では「所有者等」)に、周りに悪影響を与えないよう適切に管理する努力を求めています(第5条)。市町村には対策の計画づくりと必要な措置に努めるよう求め(第4条、第7条)、とくに危ない空き家を「特定空家等」として、市町村長が助言や指導、勧告、命令を行い、最後は持ち主に代わって取り壊す代執行までできるようにしました(第2条第2項、第22条)。 2023年の改正(令和5年法律第50号、同年12月13日施行)では、その一歩手前の段階が加わりました。放置すれば特定空家等になるおそれのある家を「管理不全空家等」とし、市町村長が持ち主に指導や勧告をできるようにしたのです(第13条)。熊本県の説明によると、勧告を受けた管理不全空家等は、固定資産税の住宅用地特例(住宅が建つ土地の税の計算のもとを6分の1などに軽くする仕組み)が外れます。傷みが進む前に持ち主に手を打ってもらうための仕組みです。改正ではほかに、NPO法人や社団法人などを市町村長が「空家等管理活用支援法人」に指定し、持ち主の相談に乗ってもらう制度もできました(第23条、第24条)。市町村にはできて、町内会にはできないこと
法律が市町村長に与えた力を、町内会は持っていません。市町村長は持ち主を探すために固定資産税の課税情報を役所の中で使うことができ(第10条)、必要な範囲で立ち入り調査もできます(第9条)。町内会には、持ち主が誰でいまどこに住んでいるのかを、公の権限で調べる手段がありません。 他人の敷地に入って草を刈ったり、壊れた戸をふさいだりすることも、持ち主の了解なしにはできません。2023年4月施行の改正民法第233条は、隣の木の枝が越えてきたとき、切るよう求めても相当の期間内に切られない場合、持ち主やその居場所がわからない場合、急ぐ事情がある場合に、越えられた側の土地の持ち主が自分で枝を切れるようにしました。横浜市は、この「相当の期間」をおおむね2週間程度と説明しています。ただしこれは隣の土地の持ち主の権利で、町内会が代わりに使えるものではありません。横浜市自身も、越えてきた枝を市が代わりに切ることはできないと書いています。 個人情報にも注意が要ります。2017年5月30日に改正個人情報保護法が全面施行され、自治会や町内会も規模にかかわらず法の対象になりました。鎌倉市の手引によると、本人の同意なく個人情報を第三者に渡すことは原則としてできず、例外は法令に基づく場合や、人の生命や財産を守るために必要で本人の同意を得にくい場合などに限られます。町内会の名簿に残る持ち主の転居先や家族の連絡先を、善意からでも不動産業者などにそのまま伝えるわけにはいきません。自治体と組んだ取り組みの例
こうした限界の中で、町内会が力を出せるのは、空き家に気づくことと、市や持ち主へつなぐことです。栃木市は2017年度、国のモデル事業として、自治会から市へ空き家の情報を伝える連絡網づくりを始めました。自治会を抜ける世帯が出たことで新しい空き家にいち早く気づける、という自治会の情報力に市が目を付けたのです。情報を受けた市が持ち主や相続人を調べ、空き家バンク(空き家を売りたい人や貸したい人と、使いたい人を結ぶ登録の仕組み)への登録を勧める流れでした。 京都市では、学区ごとの地域団体が、まち歩きによる空き家調査、空き家マップづくり、持ち主向けの相談会、活用の提案などに取り組んできました。2022年度末で206学区がこうした取り組みをしています。地域団体に専門家を紹介し活動費を補助する事業は累計63学区が使いましたが、市の財政事情から2022年度以降は新しい学区の募集を休んでいます。自治会や町内会の集まりに司法書士などが出向き、相続登記や遺言を説明する講座も開いています。 空き家を地域の拠点に変える仕組みもあります。静岡県袋井市は、自治会などが空き家を改修し、地域の活動拠点や交流施設として10年以上使う場合に、改修費の3分の2以内、上限60万円(都市機能誘導区域内は90万円)を補助する要綱を定めています。補助を受けるには、持ち主との協定か賃貸借契約を結び、建物と土地の持ち主全員の同意を得ることが条件です。盛岡市は、町内会や自治会が空き家を借りて自治公民館として使う場合に、家賃の5割(月5,000円まで、最長5年)を補助する制度を広報紙で案内していました(いまも続いているかは確認できていません)。 どの例でも、町内会が受け持っているのは、空き家を見つけること、持ち主との橋渡し、地域としての使い道の提案です。家をどうするかを決めるのは持ち主で、持ち主に強く求められるのは市町村です。見回りで気づいたことを、場所と外から見た様子に絞って市の空き家の窓口に伝えるだけでも、栃木市の例のように市の調査の入り口になりえます。空家法第8条も、市町村が置ける空き家対策の協議会の顔ぶれに、地域住民を挙げています。考えるための問い
- 町内会の区域で、人が住まなくなった家に役員が気づくのはどんなときですか。気づいたとき、誰が市のどの窓口に伝えるか決まっていますか。
- 町内会の名簿に、空き家の持ち主や家族の連絡先が残っていませんか。それを何に使ってよいか、本人の了解を得ていますか。
- 空き家を集会所や居場所として借りるとしたら、改修費や家賃、10年といった長い期間の管理を、町内会は引き受けられますか。浜区の場合はどうか、考えてみてください。
出典
- 令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要(総務省統計局・2024年)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について(国土交通省)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法について(熊本県)
- 空き家対策に関する情報(山梨県)
- 越境した枝の切取りルールの改正について(横浜市)
- 自治会・町内会 個人情報取扱いの手引(鎌倉市・2019年)
- 平成29年度先駆的空き家対策モデル事業の採択及び実施について(栃木市・2017年)
- 空き家対策の取組状況(令和5年3月末時点)について(京都市・2023年)
- 袋井市地域活性化交流施設等整備のための空き家改修支援事業費補助金交付要綱(袋井市)
- 空き家に関する広報紙の特集記事(盛岡市)