取り組み方町内会のお金を守るには 会計と監査のしくみ 10月24日 14:24 登録
町内会の会計は、多くの場合、一人の役員が一年か二年の持ち回りで受け持ちます。集めた会費を口座に預け、帳簿をつけ、年度末に決算書をつくる仕事です。2026年8月には、佐賀市内の自治会で会計を一人で受け持っていた県職員が、約2年のあいだに会費62万9,794円を横領していたと報じられました。使い込みを防ぐ手順は、総務省や市の手引きにかなり具体的に書かれています。手順が決まっていれば、会計を引き受けた人も、あらぬ疑いをかけられずにすみます。自分の町内会のお金の流れを見直す材料として、手引きと法律の中身を順に見ていきます。
佐賀の自治会で何が起きていたか
佐賀新聞によると、この職員は2024年度から2年間、自分の住む自治会の会計を一人で担当していました。2024年5月から2026年3月まで、集めた会費を口座から引き出すなどして、少なくとも15回にわたって横領しました。気づいたのは、2026年6月に会計を引き継いだ後任です。帳簿の残高と口座の残高が合わなかったのです。職員は7月21日までに全額を返し、県は停職6か月の懲戒処分にしました。自治会は被害届や刑事告訴を出さない意向だと報じられています。 この例では、一人でお金を引き出せる状態が2年近く続き、見つかったきっかけは引継ぎでした。年度ごとの監査がどう行われていたかは、記事からは分かりません。通帳と印鑑を別の人が持つ
古賀市(福岡県)の「会計運営の手引き」(2021年)は、まず団体の財布と個人の財布を必ず分けるよう求めています。集めたお金は手元に残さず、いったん全額を口座に預け、必要な分をあとで引き出します。通帳への記帳が、お金の動きの記録になるからです。そのうえで、通帳と印鑑は別の人が管理し、使うときは必ず複数の人がかかわるようにします。稲城市(東京都)の「自治会運営の手引き」(2026年3月改訂)は、印鑑は会長、通帳は会計担当という分け方を例にあげ、どちらも鍵のかかる場所にしまうよう勧めています。 この分け方が効くのは、窓口でお金を引き出すのに二人がそろう必要があるためです。総務省の研究会資料(2009年)も、横領への対策として、通帳と印鑑を別々に保管することと、帳簿に書く人と支払う人を別にすることをあげています。領収書と帳簿で何を残すか
古賀市の手引きは、お金の出入りをその日のうちに帳簿に書き、支払うときは必ず領収書をもらって保管するよう求めています。領収書には宛名、金額、日付、ただし書き(何に使ったか)があるかを確かめ、領収書が出ないときは金額、日付、用途をメモに残します。月末などの区切りで集計し、帳簿の残高と手元の現金が1円でも違えば、合うまで原因を調べます。 稲城市の手引きは、集めた会費からそのまま買い物代を払い、残りだけを収入として記録するやり方を望ましくないとしています。差し引いたあとの金額しか残らないと、いくら集めて何に使ったのかを、あとから誰も確かめられません。会費は全額をいったん収入として記録し、支出は別に記録します。監事は何を確かめるのか
監事(会計監査)は、会計を担当しない立場から、お金の使い方が会の目的と規約に沿っているかを調べる役です。古賀市の手引きの監査チェックシートは、監査はできるだけ複数の監事で行い、会長と会計担当が立ち会って質問に答える形をすすめています。確かめる項目は、たとえば次のとおりです。- 領収書がすべてそろい、帳簿の金額と一致しているか。
- 会が出す領収書に、番号の抜け(欠番)がないか。
- 通帳の前年度末と今年度末の残高が、帳簿や決算書の数字と合っているか。
- 通帳に、不自然に大きな出入りや、使いみちの分からない出金がないか。
現金の受け渡しを減らす方法
稲城市の手引きは、会費は班長などが集めて会計に渡すのが一般的だとしたうえで、口座振替などの方法もあるとしています。横浜市保土ケ谷区は2024年6月、区内の町内会の一つ(岩井町原第一町内会)で、スマートフォン決済のPayPayを使って会費を払えるようになると発表しました。現金を手から手へ渡す回数が減れば、紛失や「いくら預かったか」の食い違いが起きる場面も減ります。ただし、口座からお金を出す権限を誰が持つかという問題は、キャッシュレスにしても残ります。認可地縁団体になると何が変わるか
町内会が市町村長の認可を受けて法人(認可地縁団体)になると、地方自治法の条文が会計にもかかわります。監事は「規約又は総会の決議で」一人または数人を置くことができる(第260条の11)とされ、置くかどうかは団体が決めます。置いた場合の監事の仕事は第260条の12に定めがあり、財産の状況と代表者の仕事ぶりを監査し、法令や規約に反すること、著しく不当なことがあれば総会に報告します。その報告のために必要なら、監事が総会を招集することもできます。財産目録は、認可のときと毎年1月から3月までのあいだ(事業年度を決めている場合は年度末)に作り、事務所に備えておくことになっています(第260条の4)。税金はどうなるか
法人になっていない町内会でも、代表者の定めがあれば、法人税法では「人格のない社団等」にあたり(第2条第8号)、法人とみなされます(第3条)。ただし、法人税を納めるのは収益事業を行う場合に限られ(第4条第1項)、収益事業以外から生じた所得には法人税がかかりません(第6条)。収益事業とは、政令で定める販売業や製造業などを、継続して事業場を設けて行うものをいいます(第2条第13号)。認可地縁団体も、法人税の上では公益法人等とみなされます(地方自治法第260条の2第16項)。行事での販売などがある場合に、それが収益事業にあたるかどうかは、税務署に確かめるのが確実です。使い込みが見つかったら
兵庫県弁護士会の法律相談欄(2025年7月、神戸新聞掲載)は、まず通帳や収支計算書で財産の状況をつかみ、金融機関に取引の履歴を出してもらい、関係者から話を聞くよう勧めています。届け出た印鑑を変える、口座を止めるといった手で、被害が広がるのを防ぎます。返してもらうには内容証明郵便で求め、応じなければ民事訴訟を起こします。会費を預かる立場の人が使い込めば業務上横領罪が成り立つ可能性があり、被害届や告訴も選択肢になります。同じ回答は、再発を防ぐ手立てとして、経理担当を複数にして日ごろから二重に点検することをあげています。考えるための問い
- あなたの町内会では、通帳と印鑑(それにキャッシュカードやネットバンキングの暗証番号)を、それぞれ誰が持っていますか。一人で引き出せる状態になっていませんか。
- 監事は、領収書の一枚一枚や通帳の出入りまで見ていますか。総会の決算報告は、会員が質問しやすい形になっていますか。
- 会費の集め方を口座振替やキャッシュレスに変えるとしたら、どんな人が困り、どんな手間が減るでしょうか。
出典
- 佐賀県職員が自治会費約63万円を横領 停職6カ月の懲戒処分(佐賀新聞・2026年)
- コミュニティ活動 会計運営の手引き(古賀市まちづくり推進課・2021年)
- 自治会運営の手引き 第2版(稲城市・2026年)
- 自治会等のコミュニティ組織の会計事務における現状と課題(総務省 コミュニティ組織のガバナンスのあり方に関する研究会 資料6・2009年)
- 「コミュニティ組織のガバナンスのあり方に関する研究会」の発足(総務省・2009年)
- 「コミュニティ団体運営の手引き」の作成(総務省・2010年)
- 岩井町原第一町内会(保土ケ谷区)に「PayPay」の導入が決定(横浜市保土ケ谷区・2024年)
- 地方自治法(e-Gov法令検索)
- 法人税法(e-Gov法令検索)
- 自治会の経理担当者 使い込みが発覚(兵庫県弁護士会・2025年)