取り組み方夏祭りを安全に続けるには 火と人混みと食べ物の備え 10月25日 14:27 登録
町内会の夏祭りや盆踊りで、焼きそばの鉄板に火を入れる、道路にやぐらを組む、子どもに飲み物を配る。どれも見慣れた光景ですが、それぞれに消防、保健所、警察へ前もって知らせる決まりがあります。決まりの多くは、実際に起きた事故の反省から作られました。以下、火気、人混み、食べ物、道路の四つについて、求められていることと元になった事故を国や自治体の資料に沿って並べ、担い手が減るなかで祭りの形を変えて続けている町内会の例も挙げます。行事中のけがと保険の話は、別の記事「行事中のけがは誰が責任を負うのか 町内会と保険」で扱っています。
福知山の花火大会の火災と、露店の消火器
2013年8月15日の夜、京都府福知山市の花火大会の会場で、露店から火が出て、死者3人、負傷者56人の被害が出ました。総務省消防庁の検討部会の報告書は、被害が広がった理由の一つとして、観客の席と、火を使う露店、発電機、ガソリンの携行缶(持ち運び用の金属の缶)が近くに並んでいたことを挙げています。火災予防の体制がはっきりせず、露店主それぞれに任されていた会場もあったと指摘しました。 これを受けて消防庁は、2013年12月に消防法施行令を、2014年1月に市町村が条例を作るときの見本である「火災予防条例(例)」を改めました。新しく加わったのは主に三つです。- 祭礼、縁日、花火大会など大勢が集まる催しで、コンロや発電機などの火気器具を使うときは、消火器を用意する。
- 大規模な屋外の催しで、火災のとき特に大きな被害が出るおそれがあるものを、消防長が「指定催し」に指定する。主催者は防火担当者を決め、火災予防の計画を作る。
- 大勢が集まる催しで火気を使う露店を出すときは、前もって消防に届け出る。
明石の歩道橋事故と、人の流れの見張り
2001年7月21日、兵庫県明石市の夏祭りの花火大会のあと、会場と最寄り駅を結ぶ歩道橋で、大勢の人が折り重なって倒れました。最高裁判所の決定(2010年)が認めた事実では、11人が亡くなり、183人がけがをしました。10万人を超える人出が見込まれ、歩道橋の階段の下には180あまりの夜店が出ることになっていました。 この決定は、主催者の市、警備会社、警察の三者で警備計画を話し合いながら、歩道橋の混み具合をどう見張るか、混んできたらどう人の流れを止めるか、どの段階で警察に応援を頼むかを具体的に決めていなかったと認定しています。そのうえで、現場で警察官を指揮した警察署の担当者と、警備員を統括した警備会社の支社長に業務上過失致死傷罪が成立すると判断しました。 警備業法は、人や車が混み合う場所で事故を防ぐ仕事を警備業務の一つに数えています(2条1項2号)。こうした雑踏警備を警備会社が請け負うときは、2009年6月から、検定に合格した警備員を現場ごとに一人以上置くことが義務になりました。町内会が警備会社に頼まず自分たちで見回る場合も、明石の教訓はそのまま当てはまります。人が集まりそうな場所はどこか、誰がそこを見ているか、危ないと感じたら誰が何を止めるのかを、前もって決めておくことです。食べ物を出すときの保健所への届け出
大阪府は、自治会や子ども会が開く市民祭り、盆踊り、文化祭などで、食品の仕事をしていない人が食べ物を作って出す場合、団体の代表者が保健所に「臨時出店届」を出すよう案内しています。食品の事業者がこうした祭りで食べ物を出すときは、届け出ではなく営業許可が必要です。 大阪府の保健所が示す注意点は具体的です。出すのは提供の直前に加熱したものに限り、刺身やサラダ、冷やしうどんのような加熱しない食べ物は出さない。食器は使い捨てにし、生の肉や麺は保冷剤を入れたクーラーボックスに入れて、温度計で10℃以下を保つ。下痢や発熱、手の傷がある人は食べ物に直接触らない。アレルギーの元になる食材の有無を把握し、尋ねられたら正確に答える。道路を使うときの道路使用許可
道路でやぐらを組んだり、踊りの列を通したりするときは、道路交通法77条にもとづき、その場所を受け持つ警察署長の許可が要ります。77条1項は、道路に露店や屋台を出すこと、祭礼行事などで交通に大きな影響を及ぼす使い方をすることなどを、許可が必要な行為に挙げています。同じ条の2項は、交通の妨げになるおそれがあっても、公益上や社会の慣習上やむを得ないと認められるときは許可しなければならないと定めています。大阪府警は申請書の様式を公開しており、2025年12月からは国の電子申請の窓口からも申請できるようになりました。形を変えて続ける工夫
届け出の数が増えると、役員の負担は重くなります。大津市の自治会活動事例集には、数年ぶりの夏祭りを役員だけで準備するのは負担が大きく、一度はあきらめかけた自治会が、住民全体から手伝いを募って13人が手を挙げ、開催できた例が載っています。別の自治会は、準備の大変さから夏祭りを見送り、代わりに花火を囲む催しに切り替えて、44世帯100人が集まりました。役員からは準備の負担が軽くなったと好評だったそうです。 神戸市が紹介する鶴甲自治会では、高齢の役員数人で企画してきた祭りを、実行委員会の形に改めました。各戸へのチラシで呼びかけても手を挙げる人はいませんでしたが、知人への声かけで7人が集まり、2023年度に開くことができました。規模を小さくする、中身を変える、町内会の外から担い手を募る。どの方法でも、火、人混み、食べ物、道路の四つのうち、どれが自分たちの祭りに関わるかを先に洗い出しておくと、何を省いて何を残すかを決めやすくなります。考えるための問い
- 自分の町内会の祭りで火気を使う露店は何か所あり、消火器は誰がどこに用意していますか。消防署への届け出が要るかどうか、確かめたことはありますか。
- 人がいちばん集まる場所と時間はどこでしょうか。混んできたとき、誰が判断して人の流れを止めるのかは決まっていますか。
- 担い手が足りないとき、規模を小さくする、中身を変える、ほかの団体と組むのうち、自分たちの町内会に合うのはどれでしょうか。
出典
- 消防の動き 2018年6月号「福知山花火大会火災から5年を迎えるにあたって」(総務省消防庁・2018年)
- 屋外イベント会場等火災対策検討部会報告書(案)概要(総務省消防庁・2013年)
- 改正火災予防条例(例)の運用について(通知)消防予第33号(総務省消防庁・2014年)
- 平成29年版 消防白書「屋外イベント会場の防火対策の推進」(総務省消防庁・2017年)
- 業務上過失致死傷被告事件 平成22年5月31日 第一小法廷決定(最高裁判所・2010年)
- 警備業法(e-Gov法令検索)
- 雑踏警備業務における検定合格警備員の配置について(秋田県警察)
- 臨時出店届(大阪府)
- 模擬店における食品の取り扱いについて(大阪府池田保健所)
- 道路交通法(e-Gov法令検索)
- 道路交通法等に基づく各種申請及び届出様式(大阪府警察)
- 自治会活動事例集 みんなでつながるまちづくり(大津市)
- 自治会活動の事例(神戸市・2025年更新)