取り組み方高齢者の見守りと孤立死 町内会に何ができるか 10月27日 14:22 登録
内閣府は2026年4月14日、2025年の1年間に孤立死した人を2万2222人と推計して公表しました。1日あたりに直すと、毎日60人ほどが誰にも気づかれないまま亡くなっている計算です。この記事では、その数字が何を数えたものかを確かめたうえで、町内会がかかわる高齢者の見守りの取り組みと、続けるうえでの悩みを両方並べます。自分の町内会で何ができて、どこに無理があるかを考える材料にしてください。
孤立死の数字は何を数えたのか
内閣府の推計は、警察庁の集計をもとにしています。数えているのは、警察が扱った死体のうち、自宅で亡くなった一人暮らしの人で、死後8日以上たって見つかった人です。亡くなってから発見までに日数がかかるほど、生前に社会から孤立していた可能性が高いと考え、8日以上を目安にしています。この数字は統計というより、規模をつかむための目安の値です。自宅以外で亡くなった人や、一人暮らしでない人は、この数字に入っていません。 2025年の内訳は、男性が1万7620人、女性が4598人、性別不詳が4人でした。年齢別の表を足すと、65歳以上は1万5911人です。5歳刻みでは75歳から79歳が4329人でいちばん多く、次が70歳から74歳の4047人でした。 高齢者だけの問題ではありません。50歳から64歳の合計は5149人で、全体の約4分の1にあたります。参考として、死後4日以上で数えると3万2678人になります。どこで線を引くかによって、見える規模は大きく変わります。 この問題は最近になって始まったものではありません。平成23年版高齢社会白書は、UR賃貸住宅(約76万戸)で、単身の入居者が誰にも看取られず亡くなった件数(自殺と他殺を除く)が、2009年度に665件、うち65歳以上が472件だったと伝えています。2000年度と比べて全体で約3倍、65歳以上で約4倍です。町内会がかかわる見守りの形
見守りと聞くと、毎日の訪問を思い浮かべるかもしれません。実際の取り組みは、もう少し幅があります。 広島市の高齢者地域支え合い事業は、地域の団体が、訪問、声かけ、電話、様子の確認などで見守る仕組みです。民生委員・児童委員、地区や学区の社会福祉協議会、町内会・自治会、老人クラブが担い手として挙げられ、地域包括支援センター(高齢者の相談を受ける市の窓口)が間に入って情報を共有します。見守りを受けたい人が「見守り登録者」、見守る側が「見守り協力員」になります。2026年3月末時点で、131の小学校区にネットワークがあります。 札幌市手稲区の新発寒地区では、2025年7月3日に、町内会長、民生委員、福祉のまち推進員の三者が集まる会議が開かれました。区の社会福祉協議会や包括支援センターも加わり、参加者は計54名です。町内会ごとのグループに分かれて、日ごろの様子や気になる人の情報を交換しました。顔の見える関係をつくって互いの活動を知れば、協力の幅が広がると確認されています。 町内会の外の力を借りる方法もあります。東京都板橋区は2022年9月2日、3つの生活協同組合と見守りの協定を結びました。配達などの日常業務の範囲で、高齢者の異変の兆候に気づいたら区に連絡する内容です。負担のない範囲に限っており、消費者被害の兆候を見つけたときの相談窓口の紹介も、本人の意思に基づいて行うとされています。 JST-RISTEX のセミナーでは、コンビニエンスストアや配食サービスが、一人暮らしの高齢者の異変に気づいて地域包括支援センターに知らせた例も紹介されました。町内会の目が届きにくい時間帯や場所を、日常的に人と接している事業者が補う形です。担い手の負担という悩み
見守りは、誰かが時間と気をつかって続けるものです。声かけや様子の確認は、一度始めれば、病気や転居などで人が替わっても続けなければ意味が薄れます。引き継ぐ人がいなければ、熱心な数人に負担が集まります。札幌市の会議の記録には、地区で高齢化が急速に進み、見守る対象が増える一方で、担い手の負担感が大きくなっていると書かれています。 民生委員も同じ状況にあります。民生委員は都道府県知事の推薦をもとに厚生労働大臣が委嘱し、2023年12月1日時点で、主任児童委員を含めて全国に233,911人いました。2025年の一斉改選では、定数24万971人に対して委嘱数が22万880人で、充足率は91.7%でした。前回(2022年)の93.7%から下がっています。町内会が民生委員に頼り切れない地区が増えていくなら、町内会自身の負担はさらに重くなるかもしれません。個人情報と本人の意思という悩み
見守る側には、誰が一人暮らしで、誰が心配なのかを知る必要があります。ところが、その情報の扱いは簡単ではありません。 科学技術振興機構(JST)の研究開発事業が開いた個人情報保護のセミナーでは、現在の仕組みは本人の同意が前提で、認知症などで同意が難しい人にはうまく働かないという指摘がありました。同じセミナーでは、個人情報保護法への過剰な反応が、住民向けの研修で見られたとも報告されています。法律を恐れるあまり、必要な情報まで出さなくなる場合があるということです。 一方で、情報を集めて共有すれば安心とは言えません。見守られる側の暮らしに立ち入る行為でもあるからです。本人が望まない見守りをどう考えるかは、今回確かめた資料には書かれていませんでした。板橋区の協定が、見守りの範囲を日常業務の内側に限り、相談窓口の紹介を本人の意思に任せているのは、この点への一つの答えとも読めます。 見守りが孤立死をどれだけ減らしたかを示す数字は、今回の調査では確認できませんでした。見守りの効果は、数字では測りにくい面があります。考えるための問い
- 自分の町内会では、一人暮らしの高齢者がどこにいるのかを、誰がどこまで知っているでしょうか。その情報は、本人の了解を得て持っているでしょうか。
- 見守りを、民生委員、社会福祉協議会、包括支援センター、事業者のうち、誰とどう分け合えるでしょうか。町内会だけで抱え込むと、何が起こるでしょうか。
- 「見守る」と「立ち入る」の境目は、どこにあるでしょうか。浜区の場合はどうか、考えてみてください。