取り組み方消防団員が減るなかで、町内会は何を担ってきたか 10月28日 14:22 登録
消防団は、全国のすべての市町村に置かれている消防機関です。団員の7割余りは会社などに勤める人で、ふだんの仕事を持ちながら、火災や災害のときに出動します。その団員が減り続けています。団員をどう集めるかという問いは、町内会・自治会とも切り離せません。団員の勧誘や推薦に町内会が関わってきた地域は多く、町内会の加入率が下がれば、その経路も細るからです。
この記事では、消防庁などの資料で確かめられた団員数の推移、町内会と団員確保の関係を調べた研究や自治体の調査、地域防災での連携を定めた法律の内容を並べます。町内会が団員確保を担うべきかどうかは、結論を出さずに材料だけを出します。
消防団員は、ピーク時からどれだけ減ったのか
総務省の令和3年版情報通信白書は、消防団員数の推移として、1956年(昭和31年)に183万人、1989年(平成元年)に100万人、2020年(令和2年)に81万人という数字を挙げています。図の出典は消防庁の数値データ集です。 その後も減少は止まっていません。消防白書によると、令和6年4月1日は74万6,681人で、前年より1万5,989人減りました。令和7年4月1日は73万2,223人で、消防庁の調査では前年から約1万4千人の減少です。1956年の183万人と比べると、およそ4割になった計算です。消防団の数は2,169団あります。 減少のなかで、増えている区分もあります。令和6年版消防白書では、女性団員が2万8,595人(前年より641人増)、学生団員が7,122人(560人増)、機能別団員が3万7,580人(2,890人増)です。機能別団員とは、大規模災害のときだけ出動する、火災予防や広報だけを受け持つなど、役割を絞った団員のことです。入団者は2年連続で増え、退団者は3年ぶりに減りました。一方、団員の平均年齢は44.0歳で、前年より0.4歳上がっています。町内会は団員確保にどう関わってきたのか
町内会と団員確保の関係を、全国の数字で示した資料は、今回の調査では確認できませんでした。確認できたのは、地域を限った研究と自治体の調査です。 松下ほかの研究(地域安全学会論文集、2021年)は、新潟県、横浜市、東京都特別区の3つの消防団の団員にアンケートをとりました。論文では町内会・自治会に当たる組織を「町会」と書いています。入団のきっかけは、3つの消防団のどれでも、町会での勧誘の割合が最も高い結果でした。論文は、町会の組織が消防団と密接で、団員確保に広く役立ってきたと述べています。 ただし、同じ研究は変化も指摘しています。入団10年未満の団員は、10年以上の団員に比べて町会での勧誘の割合が低く、自分から志願した人の割合が22.8ポイント高くなっていました。論文は、町会や自治会の加入率が下がったことが団員の新規加入にも響いている可能性を挙げつつ、志願者が増えたことから、地域防災に関心のある人が一定数いると読んでいます。そして、町会のつながりから入団してもらう従来の方向だけに頼らず、入団をきっかけに町会や民生委員などの地域のつながりに入ってもらう方向も強めるべきだと提案しています。調査の対象は3団だけなので、全国の傾向とは言えません。 岐阜県の高山市が平成30年(2018年)に行った調査も見ておきます。市の消防団員1,836人に配り、1,543人が答えました。入団の動機(複数回答)で最も多かったのは、団員や元団員に誘われたことで847人(約55%)です。次に多いのが、地域の慣習を理由にした688人(約45%)でした。一方、自治会から勧められたと答えたのは13人で、1%に満たない数です。自治会が直接すすめるより、団員どうしの誘いと地域の慣習が、入団の背景として大きかったことになります。地域の慣習の中身までは、この調査から分かりません。町内会の仕組みが関わっている可能性はありますが、調査の数字だけでは言えません。「誘われて断れなかった」入団をどう考えるか
千葉県の消防団活性化検討会は、令和6年3月の報告書(案)に、県内の消防団員へのアンケート結果をまとめました。令和5年4月1日現在の団員2万3,057人が対象で、7,731人(33.5%)が答えています。 入団のきっかけは先輩団員の勧誘が72.2%で最も多く、友人・仲間の誘いが11.1%、家族の勧めが6.7%でした。入団した理由では、勧誘や誘いを断れなかったが48.9%で最も多く、地域に貢献したい・地域を守りたいが31.0%です。報告書はこの結果を、自発的に入った団員が多くない現状として受けとめています。 ここに、町内会にとっての論点があります。顔の見える関係で声をかけられる仕組みは、人を集める力になります。同時に、断りにくさに支えられた入団は、団員の負担感ややりがいの乏しさにつながるおそれがあります。報告書は、やりがいが乏しいまま勧誘を断り切れずに入った団員は、早く辞めたいと考える人が多いだろうと見ています。 町内会費や寄付との関係も、報告書に出てきます。一部の地域では、団員が活動に使う費用を地域から協力金として集めています。しかし使い道について統一した考え方がなく、住民の理解が得られないまま、集める団員の負担になっていると報告書は書いています。地域防災では、町内会と消防団はどう連携するのか
法律の側から見ると、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」(平成25年法律第110号)があります。第2条は、地域防災力を、住民一人ひとりの防災活動、自主防災組織、消防団、水防団などが役割を分け、たがいに連携することで成り立つ体制と定めています。第5条は、住民が地域の防災活動にできる限り積極的に参加するよう努めることを求めています。第6条は、住民、自主防災組織、消防団、国や地方公共団体などが、たがいに連携し協力するとしています。第8条は、全市町村にある消防団を、将来にわたって地域防災力の中核として代わりのきかない存在と位置づけ、国と地方公共団体に抜本的な強化を求めています。 この法律の条文に、町内会という言葉は出てきません。町内会の活動が「住民」や「自主防災組織」にどう重なるかは、地域ごとに違います。 連携の具体例として、千葉県の報告書(案)は、消防団の歳末警戒や火災予防の活動を、地域の自治会や自主防災組織と共同で実施することを検討する価値があるとしています。また、大規模災害に備えて、ふだんから自主防災組織や自治会との連携を意識した訓練を行うことも求めています。 こうした考え方は新しくありません。消防庁が平成9年(1997年)に公表した、消防団を中核とした地域づくりの調査検討委員会の報告書でも、地域の防災力を高めるには、自主防災組織だけでなく、町内会、婦人会、PTA、青年団、商店街などと連携する必要があるとされています。考えるための問い
- 自分の町内会では、消防団員になる人はどのようにして決まっているでしょうか。誘われた人が断りにくい空気はないでしょうか。浜区の場合はどうか、考えてみてください。
- 町内会が団員を紹介する役割を続けるとしたら、団員の側に何を約束し、団員でない住民にはどう説明するのがよいでしょうか。
- 消防団とは別に、町内会の側でできる防災の活動(訓練、名簿づくり、声かけ)は何でしょうか。消防団とどう分担できるでしょうか。
出典
- 令和3年版 情報通信白書 第3章第2節 防災・減災のICT(総務省・2021年)
- 令和6年版 消防白書 特集5 消防団を中核とした地域防災力の充実強化(消防庁・2024年)
- 令和7年版 消防白書 第2章第1節(消防庁・2025年)
- 消防団の組織概要等に関する調査(令和7年度)の結果(総務省消防庁・2025年8月29日公表)
- 消防団員の属性に着目した消防団の持続可能性に関する研究(松下・水野・関沢、地域安全学会論文集No.39・2021年)
- 高山市消防団及び活動に関するアンケート調査 報告書(高山市消防本部・2018年)
- 消防団活性化検討会報告書(案)(千葉県消防団活性化検討会・2024年3月)
- 消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律(平成25年法律第110号)の条文
- 消防団を中核とした安全で災害に強いコミュニティづくり委員会(消防庁・1997年)