泉南市 浜区文書アーカイブver0.93ver0.91

町内会について歴史・成り立ち・取り組み方・現状・将来を考える材料

← 一覧に戻る

成り立ち入会地の名義が町内会や地縁団体に移るとき、何が問題になるか 10月29日 14:23 登録

江戸時代以来、村の人びとが共同で山や原野を使ってきた慣行から生まれた権利を、入会権(いりあいけん)といいます。この入会権のある土地、つまり入会地の名義が、いまは町内会や認可地縁団体になっている例があります。名義が変わると何が変わり、何が変わらないのか。この記事は、町内会の財産を考えるときの前提として、入会権の法的な位置づけと、名義をめぐって実際に起きている論点を、確かめられた資料の範囲で整理します。

入会権とは何か

林野庁の資料は、入会林野を、昔から集落の決まりに従って薪炭材、かや、草などを採るために使われてきた山林原野と説明しています。そこから使用収益する権利が入会権です。 戦後、農業の技術や暮らし方が変わって、薪や茅を使う必要が薄れました。利用の目的が失われた入会地の多くは、手入れされない状態になったと、同じ資料は述べています。

民法は入会権をどう定めているか

民法には入会権の条文が二つあります。
  • 263条:共有の性質を有する入会権です。各地方の慣習に従い、慣習にないことには共有の規定を適用します。
  • 294条:共有の性質を有しない入会権です。各地方の慣習に従い、慣習にないことには地役権(他人の土地を決まった目的で使う権利)の規定を準用します。
林野庁の資料では、土地の所有者が入会集団自身であれば263条、集団以外(市町村や財産区など)であれば294条の入会権です。町内会や地縁団体の名義と関わるのは、おもに前者です。 どちらの条文も、先に出てくるのは慣習です。最高裁の平成20年4月14日判決は、入会地の処分に全員の同意はいらないという慣習があっても、公序良俗に反するなどの事情がなければ有効としました。構成員の資格も慣習が決めます。平成18年3月17日の最高裁判決は、構成員を世帯主に限る会則を有効とし、男性だけに限る会則は無効としています。以上は法律解説サイトによる整理です。判決の本文そのものは確認できていません。

総有と登記できない問題

入会地は、構成員の個人が勝手に売ったり分けたりできない、総有という形で持たれてきました。林野庁の資料は、権利が慣習上のもので登記できず、実質の土地所有者が不明確になる点と、総有的な所有関係のもとで個人の処分が制限される点を、新しい土地利用の妨げとして挙げています。 青嶋敏氏の論文(入会林野研究41号、2021年)によれば、不動産登記法3条は登記できる権利に入会権を挙げていません。入会権そのものは登記できないということです。ただし、入会地の土地の所有権は登記できます。その名義は、代表者個人、役員数名の共有、権利者全員の共有、大字や区の名前、市町村などの公法人、財団法人や農協、神社や寺院などと多様です。そして近年は、入会地の登記名義が認可地縁団体に移される例が増えていると、同論文は書いています。 同論文が指摘する問題は、どの名義でも入会権の存在が登記簿に正しく映らないことです。権利者全員の共有名義でも、登記簿の上では持分を譲ったり分割を求めたりできる通常の共有に見えます。その結果、名義人でない入会権者が排除される紛争や、入会権を知らない名義人の処分をめぐる紛争が起きていると述べられています。 名義人を誰にするかを、団体の側で決めることはできます。最高裁の平成6年5月31日判決は、入会団体が権利能力のない社団にあたる場合に、規約などで定めた手続により代表者でない構成員を登記名義人としたなら、その構成員が登記手続を求める訴えを起こせると判断しました。

認可地縁団体が名義人になる場面

認可地縁団体は、1991年の地方自治法改正で生まれました。市町村長の認可を受けた町内会などは法人格を持ち、土地や集会施設を団体名義で登記できます(総務省資料)。認可の要件は、地方自治法260条の2に定められています。その区域に住所を持つすべての個人が構成員になれること、相当数の人が実際に構成員になっていることなどです。 楠田詠子氏(東大院農)の学会報告(長野県山ノ内町の調査)は、入会集団が地縁団体になった事例を扱っています。山ノ内町では1994年以降に20の地縁法人ができました。法人化の理由は、公民館や森林を団体名で登記するためでした。財団法人や会社、生産森林組合に比べて設立の手続きが簡便で、収益がなければ法人税が軽減される点も利点として挙がっています。 同じ報告は、地縁法人になった集団では、共有財産が入会権というより公共的な財産として意識される面が強いと述べています。ただし、これは一つの町の聞き取りです。全国の傾向とはいえません。

名義を移すときの論点

名義が町内会や地縁団体に変わるとき、少なくとも三つの論点が出てきます。以下は、上の資料から組み立てた整理です。出典に結論が書かれているわけではありません。 一つは、持ち主の範囲です。入会の構成員は慣習で決まり、世帯主に限る例も有効とされています。認可地縁団体は区域のすべての住民に開かれていなければなりません。入会の構成員と地縁団体の構成員が違うとき、名義を移した土地は誰のものなのか。移したあとも入会権が残るのかどうか。これを直接に述べた資料は、確認できませんでした。 二つは、処分を誰がどう決めるかです。入会地の処分は慣習で決まります。認可地縁団体は、資産に関する事項を規約に定めなければなりません(地方自治法260条の2)。名義を移すと、慣習と規約という二つの決まりが並ぶことになり、食い違えばどちらに従うのかが問題になります。 三つは、入会そのものを終わらせる道との関係です。1966年(昭和41年)の入会林野近代化法は、入会権を消滅させて所有権などに切り替える手続を定めました。林野庁の資料によると、制定当時に185万ヘクタールあった入会林野等のうち、自主的な整備を含めて89万ヘクタールが整備され、令和5年度の調査で確認された残りは45万ヘクタールです。地縁団体名義への変更は、この整備とは別の道です。

考えるための問い

  • 自分の町内会や集落には、昔の共有地や山林、ため池や墓地などがありますか。あるなら、その土地の登記簿の名義は誰になっていますか。
  • 土地を町内会の名義にしたとき、昔からの利用者と、いまの町内会の会員は同じ顔ぶれですか。違うなら、その土地の売却や貸し出しは、誰が、どんな手続で決めることになりますか。
  • 共有地の名義人が亡くなったときや、代表者が替わったとき、あとから困らないために、いまのうちに記録しておくべきことは何でしょうか。

出典

姉妹サイト:それなんぼ? ほんまかいな予想 生活保護しらべ トラさんしらべ 神社しらべ 歴史しらべ 文学しらべ 音楽しらべ お笑いしらべ 落語しらべ 漫画しらべ 映画しらべ 仕事しらべ 泉南しらべ 泉州しらべ