取り組み方避難所は誰が運営するのか 内閣府ガイドラインの分担 10月31日 14:21 登録
大きな災害のあと、学校の体育館や公民館が避難所になったとき、その運営を誰が担うのかは、意外にはっきり知られていません。役所の職員が全部やってくれると思っている人もいれば、町内会の役員が当然まとめ役になると思っている人もいます。内閣府(防災担当)の「避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン(チェックリスト)」は、この分担をどう描いているのでしょうか。この記事では、ガイドラインと、同じ内閣府の「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」を読み、避難所の運営で町内会・自治会・自主防災組織に何が期待されているか、運営でつまずきやすい点はどこかを、資料で確かめられた範囲で整理します。町内会が避難所にどう関わるかを、自分の町内会に当てはめて考える材料にしてください。
運営の主体は住民、支える責任は市町村
ガイドラインは平成28年4月に作られ、令和6年12月に改定されました。市町村が災害時に必要な対応を、準備・初動・応急・復旧の段階ごとに、チェックリストの形でまとめた文書です。 運営の主体について、ガイドラインの書きぶりははっきりしています。避難所での生活は、住民が主体となって行うべきものとされています。原則は、被災者が自ら動き、助け合って避難所を運営することです。 ただし、住民に丸投げする書き方ではありません。その運営をバックアップする体制をつくることが、市町村の災害対応の根幹の一つとされています。市町村は、防災担当だけでなく福祉などの複数の部署が連携し、マニュアルづくりを進めること、訓練を通じて避難者・地域住民・ボランティア・避難所に派遣される職員の役割を前もって確認し、知らせておくことが求められています。つまり、運営するのは住民、その準備と後ろ盾は行政、という二段の構えです。避難所運営委員会に町内会はどう入るのか
運営の中心に置かれているのが、各避難所に設ける避難所運営委員会です。ガイドラインの体制イメージ図では、委員会の構成として次の顔ぶれが挙げられています。- 市町村の防災担当者
- 避難所運営責任者(避難者の代表で、自治会・自主防災組織などの代表者)
- 施設管理者
- 避難所に派遣された市町村職員
- 必要に応じて、市町村の関係部署の担当者、防災リーダー、ボランティアやNPOの代表
役割分担でつまずきやすい点
ガイドラインは、役割分担を決める項目に、一つ注意書きを添えています。リーダー、食事づくり、片付けなどの特定の活動が、特定の性別に偏らないよう、役割を固定しないように配慮するというものです。避難所の食事づくりや掃除が、いつのまにか女性ばかりの仕事になる、という事態を想定した注意だと読めます。 女性の参画については、さらに踏み込んだ記述があります。避難所のリーダーと副リーダーに男女の両方を置くこと、運営委員会などの意思決定の場では、委員の3割以上を女性とすることが望ましいと考えられる、という記述です。理由として、過去の災害で女性が意見を言う機会が限られていたことが挙げられています。乳幼児や介助が必要な高齢者、障害のある人のいる世帯では、世話をする人(多くが女性)の困りごとを踏まえた支援が必要になるため、意思決定の場にその人たちがいることが、見守りの強化につながると説明されています。 平時の役員会の顔ぶれが、そのまま運営委員会の顔ぶれになる場合、この目安は一つの物差しになります。 運営には、人の暮らしを守る具体的な仕事も含まれます。たとえばトイレについては、責任者と掃除当番を決めて役割分担を実施する項目があります。女性用と男性用の割合や、女性が昼夜を問わず安心して使えるようにする配慮も、チェックリストに並んでいます。避難所の外にいる人をどう支えるか
つまずきやすい点として、もう一つ見落とせないのが、避難所に来ていない被災者の存在です。ガイドラインは、在宅避難者を「避難所に居場所を確保できず、やむを得ず被災した自宅に戻って避難生活を送っている者」、もしくは「ライフライン等が途絶した中で不自由な生活を送っている者」と説明しています。寝たきりの家族を抱えているなどの理由で、避難所に行けない人もいるとされています。 ガイドラインによると、阪神・淡路大震災で被害が大きかった地域では、約6割の被災者が在宅避難生活を余儀なくされ、ピークの1か月半後には、避難所で暮らす人の約2倍強の人が食事を求めて避難所を訪れていました。避難所の運営は、中にいる人の世話だけでは終わりません。ガイドラインは、避難所が在宅避難者を支える拠点の役割も担うべきだと述べ、その拠点の場所の候補として、公民館や自治会館なども挙げています。 2024年6月の「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」は、この話を地域の側から詳しく書いています。手引きによれば、避難者の状況を把握しているのは、保健師、社会福祉協議会、福祉事業者、NPOなど複数の主体で、自治会・自主防災組織は、近隣の住民の安否確認と支援ニーズの把握を受け持つ主体の例として表に載っています。ところが、これらの組織はそれぞれの目的と方法で動くため、関係者のあいだで情報が十分につながらず、重複や漏れが出る場合があると、手引き自身が指摘しています。地域で確かめた情報が行政や福祉の側に伝わらなければ、その労力は支援につながりません。 手引きは、自治会などの住民が主体になって、在宅避難者向けの支援拠点を開く場合の進め方も示しています。拠点にする場所、運営の体制、民間支援団体との連携、記録や帳簿の整備を、地域で前もって検討すること、必要に応じて場所の管理者から使用の許可を得ること、そして市区町村が設置場所や運営の代表を把握できるように、事前に届け出ておくことが書かれています。コラムには、自主防災組織が運営する届出避難所の例(岡山県倉敷市)があり、運営と維持管理は自主防災組織が自ら行い、備蓄品以外の費用も組織が負担する、という条件が紹介されています。地域が担う範囲の大きさがうかがえる例です。 一方、自治会などによる運営を発災後に確保できない地域では、自治体が拠点の開設主体になることも想定されている、と手引きは書いています。つまり、町内会が担うのが前提なのではなく、地域の実情によって行政が代わりに担う余地も残されています。町内会の側の準備として読み取れること
二つの資料を並べると、町内会にできる準備の輪郭が見えてきます。避難者側の代表を出す母体になること、役員の顔ぶれに偏りが出ないよう運営委員会の構成を考えておくこと、避難所に来ない人の状況を把握する仕組みを行政や福祉の側と整えておくことです。どれも、災害が起きてから間に合うものではなく、平時の話し合いと訓練を前提にしています。 なお、ここで紹介したのは国の標準的な考え方です。実際の避難所の運営体制は、市町村の地域防災計画や避難所運営マニュアルで決まります。自分の市町村のマニュアルに、運営委員会の構成や町内会の役割がどう書かれているかは、この記事では確かめていません。考えるための問い
- 避難所の運営委員会ができたとき、自分の町内会の役員会の顔ぶれがそのまま運営の中心になると、誰の意見が届きにくくなるでしょうか。
- 避難所に来られない家族を抱えた世帯の状況を、町内会は平時から、どこまで、どのような同意のもとで知っておけるでしょうか。
- 避難所の運営について、自分の市町村のマニュアルに町内会の役割がどう書かれているかを、役員の誰か一人でも読んだことがあるでしょうか。浜区の場合はどうか、考えてみてください。