取り組み方共同作業に出られない人から集める「出不足金」は公平か強制か新着 11月1日 14:21 登録
一斉清掃や草刈り、水路や道の手入れといった共同作業に出られなかった世帯から、町内会がお金を集めることがあります。地域によって「出不足金(でぶそくきん)」「協力金」「清掃負担金」などと呼ばれ、金額も決め方も町内会ごとに違います。この記事では、この仕組みに「公平のために必要」という見方と「実質は罰金で、強制になる」という見方があることを、確かめられた資料の範囲で並べます。結論は出しません。自分の町内会に当てはめて考えるための材料です。
出不足金とは何か
出不足金は、作業に出られなかった人(出役できなかった人)から集める金銭を指す言葉として使われています。ファイナンシャル・プランナーの藤岡豊氏による2026年7月の記事は、執筆者の地域では掃除に出ない人から一律500円を集めていると紹介しています。同じ記事は、1,500円や3,000円を請求された例もあると書いています。ただし、これは一人の筆者が見聞きした例であり、全国の平均や相場を示すものではありません。 呼び名が違っても、実質は欠席した人への負担金だと考えられる、という整理もあります。この記事も、町内会は住民による任意団体で罰金を課す権限はなく、実際には協力金や清掃負担金といった名目にするのが一般的だと説明しています。公平のために必要だという言い分
集める側の理由は、作業に出た人と出ない人の差を埋めることにあります。前出の記事は、参加者は時間と労力を出し、不参加者は出せないのだから、お金で釣り合いをとる狙いがあると述べています。請求がなければ欠席が増え、一部の住民に負担が集中するという考え方も、同じ記事に出てきます。 自治体が出している手引きにも、似た説明があります。磐田市自治会連合会と磐田市が出した『自治会長コミュニティハンドブック(平成29年度版)』は、自治会活動に出ない会員から出不足金を取る自治会があることを認め、その多くは活動への参加を促すために作ったルールだろうと説明しています。ルールを決めるのは自治会自身だという立場です。 担い手が減るなかでは、この言い分は重みを増します。参加する人が固定化し、同じ人が毎回草を刈り、ごみを拾うことになれば、出ない人が何も負担しないのは不公平だと感じる人が出ても不思議ではありません。強制になるという言い分
反対側の理由は、町内会の活動は本来、自主的な参加で成り立つという点にあります。磐田市のハンドブックも、自治会活動は本来自主的に参加するものだと書いています。参加が任意なら、出られなかった分を金銭で払わせることは、実質的な義務づけになりかねません。 さらに、お金が加わると事情の違いが見えにくくなります。仕事、病気、介護、高齢での体力の衰えなど、出られない理由は人によって違います。一律の金額は、それらを区別しません。藤岡氏の記事も、支払いを拒んでも大きな問題にはなりにくいとしながら、近所づきあいが気まずくなるおそれを挙げています。払えば済むが、払わなければ居づらくなる。この圧力が、強制だと感じられる理由の一つです。裁判例は確かめられなかった
出不足金の是非を直接争った裁判例を探しましたが、確かめられたものはありませんでした。千葉県立中央図書館が2017年に国立国会図書館のレファレンス協同データベースへ登録した事例(草取りなどに出ない住民から自治会が金銭を集めることについて、判例や関連資料があるか)では、関連する判例は見つからなかったと回答されています。この事例の状況は「未解決」とされています。同じ事例は、自治会への加入や会費の強制を扱った裁判が別にあることを紹介していますが、出不足金そのものを扱ったものではありません。 この事例は、ある弁護士の解説として、規約に定めがあれば、公序良俗に反するほど不当でない限り支払う可能性が高いという説明も紹介しています。また、町内会について書かれた共著の解説書が、罰金や処罰で対応するやり方はふさわしくないと述べていることも紹介しています。どちらも、この事例を通した紹介で、私が原文を開いて確かめたものではありません。法的にどうなるかは、規約の中身と金額、断った場合の扱いによって変わると考えるのが無難です。自治体の手引きに見える中間の道
賛否が分かれるなかで、自治体や連合組織の手引きには、全面的に認めるでも、全面的に退けるでもない書き方が見られます。 磐田市のハンドブックは、一律に対応するのではなく、参加できない理由によっては出不足金を免除するなど、柔軟に対応するのが望ましいとしています。 長野県の安曇野市区長会が2017年2月にまとめた『コミュニティ・マニュアル』は、さらに具体的です。区の役員の負担が増え、なり手が不足していくことを課題として挙げたうえで、高齢者の独り住まい世帯や生活困窮者には、区費の減免とあわせて出不足金を免除する例を示しています。 どちらも、出不足金があること自体は前提にしています。そのうえで、お金の請求が弱い立場の人に重くならないようにする工夫を勧めています。金銭以外の選び方もある
藤岡氏の記事は、町内会によっては別の日の代替作業で済ませられる場合があると紹介しています。納得できない人には、別の方法で協力できないかと相談する道もあるとしています。お金で埋めるか、作業で埋めるか、免除するか。同じ公平を目指す方法でも、選べる幅があります。 ただし、この幅をどう使うかは各町内会が決めることで、手引きや記事が答えを出してくれるわけではありません。決め方としては、総会などで金額と免除の条件を明文化し、全員が事前に知っている状態にしておくことが考えられます。決まりが曖昧なまま、役員の判断で請求するかどうかが変わると、公平という目的そのものが疑われかねないからです。考えるための問い
- 自分の町内会に、作業に出られなかった人からお金を集める決まりはありますか。あるなら、金額と免除の条件は、全員が知る形で決まっていますか。
- 出られない理由(仕事、病気、介護、高齢)によって、扱いを分けるべきでしょうか。分けるとしたら、誰がどうやって理由を判断するのが無理のないやり方でしょうか。
- お金で埋め合わせる、代わりの作業で埋め合わせる、何も求めない。この三つのうち、自分の町内会の事情には何が合うでしょうか。