将来集落支援員の制度から、町内会の将来を考える新着 11月1日 14:21 登録
大阪府の郊外に暮らす町内会の役員にとって、山あいの集落の話は遠く感じられるかもしれません。ただ、人が減り、残った住民の年齢が上がり、役員のなり手がいなくなるという流れは、場所を問わず町内会の将来に重なります。過疎地域では、この流れが先に進んでいます。そこで国が何をし、何がうまくいかず、何が課題として残っているのかを、総務省の資料で確かめます。町内会が後から使える手がかりを探すためです。
集落の高齢化と小規模化は、どこまで進んだか
総務省は、過疎地域など条件不利な地域にある「集落」(数戸以上のまとまりで、住民生活の基本となる地域の単位)を、おおむね5年ごとに調べています。令和6年(2024年)4月1日時点の調査では、回答のあった1,038市町村に75,321集落がありました。住民の半数以上が65歳以上の集落は31,515で、全体の40.2%です。令和元年(2019年)の調査では22,437集落で、29.2%でした。5年で10ポイント以上増えたことになります。集落あたりの平均人口は、194.8人から180.2人に減りました。 集落の機能(草刈りや清掃、除雪、防災など、暮らしの身近な助け合い)の維持状況も、市町村が判断して集計されています。「良好」が59,507集落(75.8%)、「機能低下」が15,141集落(19.3%)、「維持困難」が2,936集落(3.7%)です。機能低下か維持困難の集落は、前回から2,084増えました。 一方で、すぐに消えてしまう集落が多いわけではありません。令和元年の調査では、10年以内に無人になる可能性があるとされた集落は505(0.7%)、いずれ無人になると予測された集落は3,117(4.1%)で、全体の86.3%は当面存続すると見込まれていました。数が増えているのは、消滅よりも、集落の力が少しずつ落ちていくほうです。集落支援員は何をする人か
こうした集落に対し、国は集落支援員という制度を設けています。自治体から委嘱を受け、集落の巡回や聞き取りで状況を調べる「集落点検」と、住民同士や住民と自治体の「話し合いの促進」をする人です。この2つが必須の仕事で、そこから進んで、見守りや草刈り、移住者の受け入れなどに関わる場合もあります。総務省は、集落の暮らしを支える基盤のような存在だと位置づけています。 自治体の費用には、特別交付税(国から自治体に配られるお金)が充てられます。1人あたりの上限は、専任が500万円、自治会長などが兼ねる兼任が40万円です。令和7年度の配置は、専任3,270人、兼任3,145人でした。専任の約5割が50代以下で、約5割が元会社員、元公務員、元教員です。約9割は、それまで暮らしていた自治体で活動しています。 ここで、都市近郊の町内会には押さえておく点があります。この措置は、国勢調査の人口集中地区(人口密度の高い市街地)での取り組みを対象にしていません。自分の町内が該当するかどうかは、市役所に確かめないと分かりません。現場の実際の動き
令和8年(2026年)4月から5月に、総務省は交付税の対象になっている6県と511市町村に実態調査をしました。回収率は100%です。集落点検のやり方で最も多いのは、地域の会合などでの情報収集(88%)で、集落内の巡回(70%)、個別訪問での聞き取り(37%)が続きます。つまり、歩いて回るだけでなく、集まりの場で耳を傾けることが中心です。 維持・活性化の取り組みでは、自治会など地縁組織の活動支援が60%で最も多く、防災・減災(42%)、草刈りなど生活環境や農地の維持(39%)、高齢者の見守り・生活支援(34%)が続きました。支援員の報告が施策につながった例として、空き家の実態報告が空き家バンクの登録促進に結びついた例や、交通の困りごとの把握が乗合タクシーの運行開始につながった例が、資料に挙げられています。 滋賀県大津市の葛川地域では、令和7年(2025年)5月から、市の委託を受けた郵便局が集落支援員の仕事を担っています。住民が集まる月1回の「かようびサロン」を、まちづくり協議会と一緒に運営し、そこで聞いた意見を報告会で市に伝えています。課題はどこにあるか
最初の課題は担い手です。令和元年の調査で、集落支援員を使うにあたって何らかの課題があると答えた市町村は82.5%で、最も多い理由は、住民の高齢化と減少によるなり手の不足でした。制度を使っていた市町村のうち、今は使っていないと答えたところでは、人材不足が最も多い理由でした。予定した期間が終わった、あるいは目的を達したためという理由も挙がっており、続けること自体を目的にしていない自治体もあります。 次に、支援員本人の困りごとがあります。令和8年の調査では、困りごととして「役割や目標が不明確」が46%、「スキル不足」が44%、「住民や自治会との関係づくりが難しい」が40%でした。令和5年(2023年)の全国過疎地域連盟の調査では、難しい課題に直面した要因として「住民の反応が乏しい」が最多で、1,539人中723人(47.0%)でした。人を置けば住民が動くわけではない、ということです。 支える側の自治体も余裕がありません。支援が十分にできていると答えた市町村は30%で、課題がある市町村にその理由を聞くと、「職員に余力がない」が67%でした。人事異動で担当が替わることも、継続的な支援を難しくしていると資料は指摘しています。 最後に、報酬の問題があります。総務省の過疎問題懇談会の議論では、地域の運営の中心的な役割を期待される以上、ボランティアに頼らず、仕事に見合った対価をどこまで保障するかを検討すべきだという指摘が出ました。兼任の上限額は専任の約12分の1です。住民の役員が兼ねる形は、安く済む一方で、負担が個人に集中しやすい面があります。町内会に引き寄せて考えるために
集落支援員の中身は、町内会の役員が日ごろしていることと、かなり重なっています。町内を歩いて空き家や危険な場所を知る、集まりで困りごとを聞く、行政へ要望を伝える、といった仕事です。違いは、それを一部の人が仕事として担い、記録を残し、自治体と共有する仕組みがあるかどうかです。 もちろん、過疎地域の集落と都市近郊の町内会では事情が違います。集落支援員の制度は、人口集中地区には使えません。同じ制度を持ち込めるとは限りませんが、人が減ってから慌てるのではなく、点検と話し合いを早いうちから続けるという考え方は、規模にかかわらず使えます。考えるための問い
- 町内にある空き家、一人暮らしの高齢の方、危険な場所を、役員の頭の中だけでなく、記録として残して共有できているでしょうか。
- 役員が無償で担っている仕事のうち、これ以上は個人の善意に頼れないものはどれでしょうか。対価を払うか、外に頼むとしたら、何からでしょうか。
- 町内会の話し合いに出てこない人の声を、どうすれば聞けるでしょうか。